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2020.01.31 / よもやま話

日本の逸品

3ヶ月前のことで恐縮ですが、誕生日プレゼントについてのお話です。一昨年の秋、小学生の娘からプレゼントを買ってもらったお父さんの話として、「誕生日プレゼント」というブログを書きました。当時、なかなか良い物語が書けたと思うので、読んだことのない人はそちらもご笑覧ください。

さて、昨秋も娘から「何がほしい?」と聞かれたため、珍しく「爪切りがほしいなぁ」と即答しました。気付いたら爪が伸びていることがあるため、会社に常備しておきたかったからです。しかし「爪切り」と言った後で、「待てよ」と昔の記憶が呼び覚まされました。それは昔に買った雑誌の記憶です。

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これは雑誌「男の隠れ家」の別冊で、「世界が認めた日本の逸品、にっぽんの凄技」というムック本です。この中には兵庫県豊岡のかばん、愛知県瀬戸の陶磁器、岐阜県関の刃物、福井県鯖江の眼鏡など、多くの逸品が紹介されていて、そこに新潟県燕三条の「爪切り」があったことを覚えていたのです。2013年発行のそれを本棚から出して開いてみると、確かに載っていました。我ながら大した記憶力です(笑)

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「燕三条」は、日本を代表する金属産業の町、世界的にもTSUBAMESANJOブランドとして知られていますが、正しくは信濃川を挟んで燕市と三条市に分かれます。
燕市は、銅を金鎚で打ち起こしながら形成していく鎚起銅器(ついきどうき)を原点とする金属洋食器や金属ハウスウェアを生産する会社が多く、デンマーク王室御用達のカトラリーを製作する大泉物産、ノーベル賞受賞晩餐会のカトラリーを手掛けた山崎金属工業などがあります。
三条市は鍛冶の技術を生かした打刃物や工具類を生産する会社が多く、ペンチやニッパーなどの工具やプロ仕様のネイルニッパーを製作するマルト長谷川工作所、「爪切りのロールスロイス」と称賛されるネイルニッパーを手掛ける諏訪田製作所などがあります。

会社名は忘れていましたが、鍛冶職人の技が生きる「爪切り」のことは覚えていて、それが諏訪田製作所のネイルニッパーでした。「SUWADAつめ切りクラシック」は、材質がハイカーボンステンレス鋼で表面は汚れに強いサテンフィニッシュ。Lサイズ、Sサイズがあって価格は7,000円以内です。娘に買ってもらうには高価ですが、妻に買ってもらうという形でお願いしました。妻は早速、ネットショップでポチッ(笑)
そして2日後には自宅に商品が届きました。黒いケースには「SUWADA」の文字。開けてみると・・・

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見慣れた爪切りと違うニッパー型なので、最初は戸惑いましたが、切れ味が良いので爪の表面が綺麗に仕上がります。「世界が認めた日本の逸品、にっぽんの凄技」とあるように、実際に世界でも売れているようで、職人の手仕事による「ものづくり」が、日本の財産であることを再認識しました。

これと似た話として、東京書籍「くらべる値段」という本も面白いので紹介します。この本は「1250円のカステラ」と「6600円のカステラ」を比べたり、「1960円のフライパン」と「2万6千円のフライパン」を比べたりして、モノの値段を考えさせてくれる本です。
その文中に「1万5千円のヘッドフォンは1万5千円の音作りが、5万円のヘッドフォンは5万円の音作りがしてあります」という取材コメントを見つけた時、家づくりでも同じことが言えるな、と膝を打つ思いでした。消費者としては「よいものを安く」と考えがちですが、素材を吟味し、手間暇かけてつくったものが安いはずがないですよね。ネイルニッパーを手にして、そんなことも思ったりしました。

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さて、高価なネイルニッパーに半信半疑だった妻も、実際に試してみて「凄い」と納得。わが家の爪切りにしようと言い出しました。「そうなるだろうな」と覚悟はしていたので、自分は家で使っていた爪切りを会社に持って行き、机の引出しに入れてあります(笑)

岸 未希亜

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