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2023.09.07 / よもやま話

バス停のベンチを作ったら

この夏はスポーツの世界大会が熱いですね。世界陸上では女子やり投げの北口榛花が、女子のフィールド種目では史上初の金メダルを獲得しました。100mのサニーブラウン(6位)、110mハードルの泉谷駿介(5位)、3000m障害の三浦龍司(6位)、35km競歩の川野将虎(銅メダル)、5000mの田中希美(8位)、35km競歩の園田世玲奈(7位)も活躍しました。個人的には、田中希美が5000m予選で出した日本新記録、そして決勝の走りには感動しました。

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朝日新聞8月27日朝刊より

そしてバスケットボール男子のワールドカップ(以下、W杯)では、グループリーグで格上のフィンランドに勝つなど、「世界大会で17年ぶりの勝利」「ヨーロッパ勢から初勝利」を果たし、順位決定戦でも2勝して「史上初となるW杯3勝目」とアジア最上位を得てパリ五輪出場権を獲得しました。自国開催の東京五輪を除けば「48年ぶりの五輪自力出場」ということで、選手とトム・ホーバスヘッドコーチを讃えたいです。

さて、今日は心温まる話をお届けします。

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昨年11月に鎌倉で竣工した住宅があります。交通量の多いバス通りに面していて、家の目の前にバス停がありました。建て替え前の住宅は道路ギリギリに建っていて、バス停利用者が建物と道路の隙間に空き缶やゴミを捨てることが多かったそうです。観光客の多い土地柄とはいえ、日本にもそんな人がいるのかと悲しい気持ちになります。新しい家でも同様のことが起きるのではないかと、建て主のY様は心配されていました。

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そこで最初、ここにゴミを捨てられないよう、町屋の犬矢来(いぬやらい:町屋の軒下に見られるアーチ状の垣根)のようなものを考えました。しかし一方、住人が心を閉ざした印象を与えるような気もしたので、考え直してバス停のベンチを提案しました。

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ゴミを拒絶するよりも、「どうぞ座ってください」というメッセージを込めれば、ゴミを捨て難くなると思ったからです。でも、これは性善説に基づく理想主義的な考えですよね。これまで敷地内にゴミを捨てられてきたY様にとって、素直に受け入れるのは難しかったかもしれませんが、私の提案に賛成してくれて「ベンチ」が実現しました。

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その当時、外構工事が全て終わっていないにもかかわらず、もうベンチに座っている人がいました(笑)
それぐらい、「座ってください」というメッセージは伝わっていたと思います。

そして最近、Y様から連絡をいただきました。
通勤のために早朝にバス停を利用している男性がいて、Y様が洗車している時に顔を合わせると、口頭で何度かお礼の言葉をいただいていたそうです。その方はご病気をされて以来、腰が悪くなってしまい、長い間立っているのが辛いとのことで、「バスを待っている際に、ちょうど腰掛けられるベンチがあって助かっている」という話でした。

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そしてこの度、「いつもベンチを使わせていただいているお礼」として、お菓子をくださったということで、Y様がわざわざ当社にお裾分けしてくれました。その方が食べておいしかったという、お米チップス(新潟味のれん本舗)です。

なるべく綺麗に使っていただけるよう、Y様も気付いた時はベンチを拭くようにしているそうで、その男性以外にも、ご年配の方や子供連れの方など、多くの人からお礼の言葉をいただいているとのこと。道路を挟んだお迎えの店主さんにも「何て素晴らしいことをするの!」と褒められたそうです。そして、ゴミが本当に少なくなったということを喜んでいました。
「情けは人の為ならず」と言いますが、バス停の光景を思い浮かべるとほっこりしますね。

岸 未希亜

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