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2023.06.07 / よもやま話

最年少名人

先週、藤井聡太竜王が渡辺明名人との名人戦七番勝負を4勝1敗で制し、20歳10ヶ月で名人位を獲得しました。これで谷川浩司十七世名人のもつ最年少記録を40年ぶりに更新。さらに将棋界の8タイトル(竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖・叡王)のうち、王座を除く七冠を占有することになり、テレビやSNSのニュースで大きく報じられました。

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朝日新聞6月2日朝刊より

将棋のタイトルは永らく7タイトルでしたが、2017年に叡王戦が創設され、現在は8タイトルになっています。7タイトル時代の1996年、平成棋界の中心に君臨していた羽生善治九段が全タイトルを独占する七冠を達成。史上初の出来事だったため、その時も大々的に報じられていました。

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Sports Graphic Number1010より

また、将棋界には永世称号と呼ばれるものがあります。タイトルを一定数獲得すると、引退後に永世称号を名乗る資格が与えられるのです。
・永世竜王(連続5期または通算7期):渡辺明、羽生善治
・永世名人(通算5期):木村義雄、大山康晴、中原誠、谷川浩司、森内俊之、羽生善治
・永世王位(連続5期または通算10期):大山康晴、中原誠、羽生善治
・名誉王座(連続5期または通算10期):中原誠、羽生善治
・永世棋王(連続5期):羽生善治、渡辺明
・永世王将(通算10期):大山康晴、羽生善治
・永世棋聖(通算5期):大山康晴、中原誠、米長邦雄、羽生善治、佐藤康光
・永世叡王(通算5期):該当者なし

取得条件は各タイトルによって異なるのですが、連続5期(5年連続でタイトルを維持)、通算10期(不連続でも通算で10年獲得)など、そのハードルは非常に高く設定されています。タイトルを1期獲得するだけでも大変なことなので、ここに名前のある人はスーパーエリートな訳です。

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Sports Graphic Number1044より

そして、叡王を除く7タイトルに「羽生善治」の名前がありますね。羽生さんは永世称号を7つも保持している永世七冠で、さらにタイトル獲得が通算99期というのも前人未到の大記録です。2位は故大山康晴十五世名人の80期、3位は引退した中原誠十六世名人の64期、4位が渡辺明前名人の31期です。20歳で早くも15期に達している藤井聡太新名人が、この記録に追いつくとしたら何年後でしょうか。

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Sports Graphic Number1060より

今年1月に始まった王将戦七番勝負では、藤井王将と羽生九段の対決(藤井王将が防衛)が実現して話題になりました。
しかしタイトル保持者への挑戦権を得るのは1年に1人だけ。挑戦権を掴むための戦いも熾烈です。多くのタイトル戦は予選と決勝トーナメントがあり、上位クラスの棋士はシードされているものの、優勝しなければいけません。王将戦と王位戦は、予選を勝ち抜いた棋士と4名のシード棋士で挑戦者決定リーグを行います。ここを勝ち抜くのも容易ではありません。
その中で名人戦だけはシステムが全く異なります。棋士をA級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組の5つにクラス分けしてリーグ戦を行い、各カテゴリーの上位と下位の2~3名が昇格・降格で入れ替わり、A級の優勝者が名人挑戦権を獲得するという仕組みです。

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Sports Graphic Number1010表紙

他のタイトルでは十代で早々に挑戦権を掴み、タイトルを獲得し続けている藤井竜王も、名人挑戦には6年かかりました。昇級に1年足踏みしたものの、順調にA級まで上がって見事に最年少名人を獲得。彼が持つ最年少記録は四段昇段14歳2か月、タイトル初挑戦17歳10か月、タイトル初獲得17歳11か月など、枚挙に暇がありません。

そして名人位獲得の余韻に浸る間もなく、月曜日には佐々木大地七段との棋聖戦五番勝負の第一局がベトナムで行われました。次いで7月から始まる王位戦七番勝負も佐々木大地七段との対戦です。さらに藤井名人は、ベスト8に残っている王座戦挑戦者決定トーナメントで優勝を目指します。
7つの防衛戦を戦いながら王座を獲得するのは困難なミッションですが、前人未到の八冠なるか、日本中が注目しています。

岸 未希亜

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