ブログ

2021.11.18 / 建築と住まいの話

パッシブデザインの授業

エアサイクルの加盟工務店は、エアサイクル本部(フクビ化学)から様々な支援を受けています。そのうちの一つが、加盟工務店向けのデザイン塾です。今年、数年ぶりにデザイン塾が開催されましたが、今回は私がその講師を頼まれ、6月、7月、9月、10月と4回の授業を行いました。

desjyuku11.jpg
コロナ禍で普及したWEB会議システム「ZOOM」を活用したWEBセミナーのため、時間とお金をかけて東京に集まる必要がなくなり、東北や九州の工務店も気軽に参加できるようになりました。直接お会いする機会が減ったのは残念ですが、当日も普通に仕事ができて、16時までに会社に戻れば授業が受けられるのは、とても便利ですね。

加盟工務店からの要望を受けて、メインテーマは「パッシブデザイン」になったのですが、私はそのテーマで講演したことが無かったので、一から資料をつくるのが大変でした。会社の仕事が多くなっていく時期とデザイン塾が重なり、当時はかなり追い込まれていました(笑)

desjyuku12.png
パッシブデザインについて講演したことは無いのですが、普段の設計で実践していることと重なるため、設計事例から引っ張り出せば、資料をつくることはできました。
第1回「パッシブデザインの基本」の目次はこんな風にまとめました。
1.日射取得と建物配置
2.日射遮蔽と屋根
3.庇による日射遮蔽
4.日射取得と窓
5.日射遮蔽と窓

「日射取得と建物配置」は設計の基本中の基本です。

desjyuku13.jpg
方位に素直に、南向きに建てることが基本で、敷地が広くなければ北側に寄せることも基本です。
方位が敷地境界に対して斜めに振れている場合は、相当に敷地が広くなければ南に正対させられません。市街地の限りある面積の敷地では、様々な工夫が必要になるという話です。

「日射遮蔽と屋根」も基本的なことですが、意外と疎かにされています。

desjyuku14.jpg
適度に南側の軒を出すことで夏の日射を遮り、冬の日射は取り込むことができます。ところが昨今は、屋根の軒を出さない家が増えています。市街地では斜線制限なども厳しく、屋根の形に工夫が必要な場面は多いですが、「南側の軒を出す」ことだけは必ず実践してほしいと思います。

屋根で遮蔽できない時は「庇による日射遮蔽」という手があります。

desjyuku15.jpg
北下がりの片流れ屋根とか、デザイン的に軒のない箱のような家にしたい場合も、窓の上に適切に庇を設けることで、日射遮蔽ができます。

「日射取得と窓」は、誰もが体験的に知っている「冬は窓辺が暖かい」ということです。

desjyuku16.jpg
「高気密高断熱=窓を小さくする」と考えてしまうと、南側の窓も小さくしてしまいがちですが、冬の太陽熱を室内に取り込むには、南面の窓は大きくするのが基本です。夏の日射遮蔽のために軒や庇を出しているので、できるだけ床面に近い高さまで窓にするのがベターです。

「日射遮蔽と窓」についても、誰もが知っている「西日は暑い」ということです。

desjyuku17.jpg
朝夕の太陽高度は低いので、軒や庇を出しても日差しを防ぐことができません。気温が低い朝の太陽熱は室温に大きな影響を与えませんが、西日は室温に影響します。東西(特に西)の窓は小さくする、遮熱ガラスを使う、ルーバー等で日除けする等の工夫が必要になります。

「パッシブデザイン」と言うと新しい技術のように聞こえますが、日本の建築や民家は元来がパッシブデザインと言えます。それに加えて、雨が多い日本の気候的特徴を考えても、屋根は極めて重要な部位です。
現代では様々な技術の進歩によって、パッシブデザインに依らない設計が増え、そちらが主流のようになっていますが、パッシブデザインを考える時、改めて日本の風土に適った日本らしい家の大切さに思いが至ります。

岸 未希亜

.
.
.

-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-
創業から49年の実績。自然素材を使った健康住宅で地域に根ざす工務店
藤沢 鎌倉 茅ヶ崎 湘南 神奈川
新築もリノベーションも、注文住宅の木の家は神奈川エコハウスにご相談ください
木造住宅/和風住宅/和モダン/自然派健康住宅/エアサイクル住宅

Category
お知らせ
建築と住まいの話
よもやま話
ロコハウス
書籍・メディア掲載
Archeives