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2020.11.05 / 建築と住まいの話

鎌倉五山 円覚寺

先日、テレビ東京の「新・美の巨人たち」で「鎌倉五山」を特集していました。ちょうどテレビを点けた時に近藤サトさんが円覚寺を訪ねていたのですが、画面下に流れていた「円覚寺舎利殿 11月1~3日に特別公開」というテロップに、私の目は釘付けに・・・。

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たまたま11月3日は娘のために半休を取るつもりだったので、「一緒に鎌倉に行こうか?」と娘を誘って、円覚寺に行ってきました。小学6年生の次女とは、一緒に金沢や白川郷を訪れたり、京都で金閣や銀閣を見てきたりしているので、今回も喜んで付いてきてくれました(笑)

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円覚寺は、鎌倉幕府執権・北条時宗が中国僧の無学祖元を招いて創建した、臨済宗円覚寺派の大本山です。北鎌倉駅のすぐ横にあり、JR横須賀線の線路が円覚寺境内を横切っているため、線路の手前にある百鷺池、踏切を通過する横須賀線、階段の上にある山門が同時に見える光景はシュールです。山門を見上げる階段の両脇に茂るモミジは、まだ青々としていました。

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仏教の宗派は数多くありますが、平安時代末期から鎌倉時代にかけて7つの宗派が起こります。浄土宗、浄土真宗、融通念仏宗、時宗の浄土系4宗、禅宗系の曹洞宗、臨済宗、法華経のみを信仰する日蓮宗の7つです。「念仏を唱える」「座禅を組む」といったわかりやすさで、一般民衆の間にも広く浸透していくのが鎌倉仏教の特徴で、「浄土宗=法然」とか「曹洞宗=道元」など、日本史の授業で習いましたよね(笑)
臨済宗を日本に伝えたのは栄西で、京都で建仁寺を創建した人物です。鎌倉の臨済宗は、蘭渓や無学といった中国からの禅僧によって興隆し、建長寺や円覚寺が創建されました。そうした歴史的背景から、臨済宗には総本山がなく、妙心寺派や南禅寺派など14派に分かれています。京都五山、鎌倉五山という五山十刹の格付けもあり、鎌倉五山は①建長寺 ②円覚寺 ③寿福寺 ④浄智寺 ⑤浄妙寺 という序列になっています。

総門を潜った所に受付があり、拝観志納金(大人・高校生200円/小・中学生100円)を払って境内へ。

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最初に現れるのが県の指定文化財になっている山門(1785年に再建)です。壮大な緑青色の銅板葺き屋根、軒が大きく反った優美な屋根曲線、見上げる軒裏の扇垂木(放射状に配された垂木)も印象的です。
山門に続いて、鉄筋コンクリート造の仏殿(1964年に再建)、法堂跡(1563年の大火で焼失)、方丈(儀式・行事の場)が一直線に建ち並ぶのが禅宗寺院の典型的な伽藍配置のようですが、鎌倉特有の谷戸(丘陵地が侵食されてできた谷)に建てられている影響もありそうです。

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それらを横目に坂道を登っていくと池があり、左に折れると正続院(しょうぞくいん)という塔頭の門があります。今日は特別拝観日なので、入口で拝観料を払って門の中へ。一番奥に塀で囲まれた一角があり、その中に「舎利殿」がありました。

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「おおーっこれが舎利殿か」という感動とともに、「可愛らしい」というのが第一印象でした。裳階(もこし)と呼ばれる庇があるため二層に見えますが、構造的には一層の建物で屋根は杮葺き入母屋造りです。寺院の建築様式は「和様」「大仏様」「禅宗様」に分類されますが、円覚寺舎利殿は禅宗様の代表的な遺構の一つとして国宝に指定されています。何と、神奈川県内にある唯一の国宝建築なのです。

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舎利殿に見られる禅宗様の特徴は、床を組まずに土間床であること。柱の下にソロバン玉のような礎盤を置くこと。二重の扇垂木で構成されていて、強い反りのある屋根。屋根を支える組物が三段階にせり出した「三手先」のため、軒がとてつもなく深いこと。その組物を柱と柱の間にも入れる「詰組(つめぐみ)」なので軒下が賑やかなこと等々。娘にも、その一部を分かりやすく解説しました(笑)

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境内を奥に進むと「佛日庵」という塔頭があり、境内には北条時宗・貞時・高時を祀った「開基廟」という廟所があます。お線香をあげるとともに、娘にねだられて抹茶をいただきました。
また、境内の南端、100段以上の石段を上った所に「洪鐘(おおがね)」と呼ばれる国宝の梵鐘があります。北条貞時が寄進(1301年制作)したもので、高さは2.6メートルあるそうです。

舎利殿の特別拝観に合わせてきた人も、知らずに来た人もいると思いますが、コロナ渦ということと、紅葉前の時期だったので、境内は比較的空いていました。禅宗様に興味のある人は、来年行ってみてください。

岸 未希亜

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