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2020.09.18 / 建築と住まいの話

伊那街道の町並み 足助

前回の「名古屋市有松」に続いて、久々に未公開の重要伝統的建造物群保存地区(以下、重伝建地区)を紹介します。
愛知県に2ヶ所ある重伝建地区のもう一つが「足助(あすけ)」です。足助町は愛知県中央北部(三河国の北西部)に位置する山間の町で、2005年に豊田市に編入されました。「香嵐渓」という東海屈指の紅葉の名所があることで知られています。

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足助町のマンリン小路

三河(愛知県東部)から伊那谷を通って信州(長野県)へ至る道は伊那街道(飯田街道)と呼ばれ、江戸時代には中山道の脇往還として栄えました。五街道の中山道が大名の参勤交代などで通行規制が厳しいのに対し、伊那街道では中馬(ちゅうま:宿場町毎に馬を替えなくてよい)と呼ばれる陸上輸送が盛んで、物資輸送の面で有利だったのが理由のようです。そのため「中馬街道」と呼ばれたり、長野の善光寺詣りをする人が多いことから「善光寺街道」とも呼ばれました。

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山間部なので、谷筋に流れる川と平行して道が開かれており、伊那街道(現在の国道153号)も矢作川の支流である巴川に沿って走っています。西から国道153号をやって来て、巴橋を渡った所に1799(寛政11)年に建立された常夜灯があります。ここで国道から分かれて常夜灯の脇から旧道に入ると、足助宿の玄関口にあたる西町があります。

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西町は、明治から大正にかけて宿屋が軒を連ねていたところで、宿場町としての顔を持っています。今も営業している玉田屋という旅館は、錣葺き(しころぶき)という古い形式の屋根をしており、江戸時代末期の旅籠(はたご)の風景を想像させます。また、川に面している町の裏側も昔日の面影を感じさせます。

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橋を渡ると新町で、ここからは川の右岸に町並みが展開しますが、「妻入り」と「平入り」が混在しているので町並みに変化があります。また、1775(安永4)年の大火で多くの家が焼失したため、大火以降の建物には漆喰壁の防火構造である「塗屋造り」が多く見られます。

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新町の一角には、足助で最も有名な「マンリン小路」という路地があります。町並みに路地は付きものですが、傾斜のきつい坂道になっている点が珍しく、黒板張りの外壁に囲まれた狭い空間が心地よく、誘い込まれるような小路でした。

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新町に続くのが本町で、足助の中心地として江戸時代には大きな商家が建ち並んでいました。現在も「平入り」の大きな商家が多く残っていますが、「妻入り」の商家が連続している所もあって、見応えのある景観が形成されています。

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景観に合わせて平成元年に建て替えられた郵便局があったり、現役の商店街として機能しているようで、人の動きが活発に感じられました。入れ替わりで路上駐車が絶えないので、写真を撮る上では閉口しましたが(笑)
本町の東端は鍵形に折れるため、一瞬ここで町並みは終わるのかなと思いますが、クランクした先にも町並みが続きます。

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この田町も現役の商店が多いため、看板類はやや気になったものの、活気ある雰囲気が漂っていました。愛知県の指定有形文化財になっている建物も多く残っており、町並みとしても往時の姿をよく留めています。先へ進むと道がカーブしており、景色の変化があって写真映えするポイントでした。

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海と山を結ぶ物資の中継地として栄えた足助町。なかでも信州の人々にとって塩は最も重要で、足助は「塩の町」、伊那街道は「塩の道」とも呼ばれました。伊那街道の終点である「塩尻」の地名の由来は、「塩の道の終点」という説もあるようです。
三河湾で作られる塩はもちろん、播磨産をはじめとする西国の塩も足助に荷揚げされ、ここで各産地の塩を混ぜて品質を整え、「足助塩」とか「足助直(なおし)」の銘柄で出荷されました。天保年間には塩問屋が14軒もあったそうです。

かつて大学の授業で、足助町でお年寄りが活躍する観光・福祉総合施設「百年草」の話を聞いたことがあり、それ以来ずっと耳に残っていた「足助」に25年以上経って来ることができました(笑)
また数年前、NHK「鶴瓶の家族に乾杯」で放送された映像も見ましたが、若者が少なくなっている現実に抗いながら、お年寄りが元気に暮らす町のようです。

岸 未希亜

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