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2020.03.25 / 建築と住まいの話

京都 再発見

先日お伝えした通り、少し前に兵庫県へ出張したので、帰りに京都で途中下車してみました。近年、インバウンドで観光地は外国人旅行者で溢れており、京都は特に凄いと聞いていたので、最近は行くのを避けていましたが、7年ぶりの京都です。
京都は何度も行っているので、大徳寺や泉涌寺など、渋い所を回ることが多くなっていましたが、今回まずは清水寺に向かいました。

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2017年2月から始まった本堂(国宝)の檜皮葺き屋根の葺き替え工事が昨年末に完了し、本堂を覆っていた素屋根が、ちょうどこの2月に撤去されたのです。昨年、修学旅行で京都を訪れた娘も見られなかった清水寺本堂が、3年ぶりに姿を現しました。

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崖に面して建つ本堂は、背の高い束柱を縦横の貫で結んだ「懸造り(懸崖造り)」で、下から見上げた姿は圧巻というしかありません。重機も無い時代に、どうやってこの建築を造ったのか、想像するのも面白いですね。

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実は、私が京都で初めて見た社寺建築は清水寺で、中学3年の修学旅行でした。まだ歴史や古建築の知識が乏しく、奥の院から本堂を眺められる有名なアングル(3枚前の写真)も知りませんでした。「ここが清水の舞台か」と舞台からの眺めを味わった後、階段を下りて音羽の滝に向かったことを覚えています(笑)

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清水寺を出て清水坂を下ると、途中で右に折れる下りの階段が現われます。ここから先は、重要伝統的建造物群保存地区(以下、伝建地区)の「産寧坂」です。

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京都市内には他に「祇園新橋」「上賀茂」「嵯峨鳥居本」という伝建地区がありますが、産寧坂の人通りが一番多く常に賑わっています。近年の人の多さと比べれば少なかったでしょうが、それでも観光客の姿は多く、中でも着物を着て歩く若い人の姿が目立ちました。

次に訪れたのは慈照寺(銀閣寺)です。皆さんも一度は訪れたことがあると思いますが、私は10年ぶり4度目でした。元は、将軍を退いた足利義政が造営した「東山殿」と呼ばれる山荘で、義政の死後に禅宗寺院に改められました。銀閣と呼ばれる観音殿(国宝)は、上層を禅寺様式の仏堂「潮音閣」、下層を書院造りの「心空殿」で構成されていますが、もう単純に美しいです(笑)

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銀閣や向月台、銀沙灘ばかりに注目が集まりますが、本堂の横に建つ東求堂(国宝)を見逃してはいけません。義政の持仏堂として建てられた小さく簡素な建物ですが、正面に仏間、裏側には付書院と違い棚を備えた4畳半の部屋があります。それが書院造りの源流と言われる「同仁斎」です。

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これら建築群の東側には、山や池を取り込んだ苔庭が広がります。都の雑踏にありながら脱俗の境地を味わうという「市中の山居」という美意識は、草案茶室をつくる茶人の間に広まっていきますが、そのさきがけが「同仁斎」であり、自然の四季を感じる庭にあったと言えます。

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その次に訪れたのは鹿苑寺(金閣寺)で、私は恐らく2度目の訪問です。元は、鎌倉初期の山荘を譲り受けた足利義満が造営した「北山殿」と呼ばれる山荘で、義満と夫人の没後、禅宗寺院に改められました。風化する木造の渋さが日本建築のイメージですが、金箔をまとった金閣の姿は異彩を放っています。

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金閣と呼ばれる舎利殿は複雑な構成になっていて、初層は「法水院」と呼ばれる神殿造りの阿弥陀堂、二層は「潮音洞」と呼ばれる武家造りの観音堂、三層は「究竟頂」と呼ばれる禅宗仏殿風の室になっています。放火によって1950年に焼失し、1955年に復元された建築のため、国宝や重要文化財ではありませんが、特別史跡・特別名勝に指定されている庭園とともに世界遺産に選ばれています。

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鏡のように金閣を映し出すことから名付けられた鏡湖池。波紋の立たない無風であれば、完璧な「逆さ金閣」が拝めたと思いますが、紅葉や雪景色なども含め、見る時によって様々な表情を見せるのもまた魅力です。そして金閣の美しさは分かりやすい。外国人旅行者もここが一番多かったと思います。

私は昔から「そうだ京都、行こう」というJR東海のCMが好きで、若い頃は特別拝観の茶室巡りや御朱印集めでよく京都に行きました。大徳寺(真珠庵・玉林院・孤篷庵など)、金戒光明寺、曼殊院、円通寺など渋い所が好きなのですが、今回は京都の定番スポットと言える「金閣寺・銀閣寺・清水寺」を回り、初心に返った感じがしました。

岸 未希亜

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