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2019.05.23 / よもやま話

北アルプス 後篇

今回の誘いを受けた時、すぐに「長野県大町市に行くならどこに行こうか」と考えました。松本、安曇野、上高地など、周辺に有名な観光地がいくつもある中で、私が真っ先に思い浮かべたのが重伝建地区の「青鬼(あおに)」でした。恐らく1000人に聞いても、誰一人「青鬼」とは言わないでしょうね(笑)
そしてもう一つ、大町市の近くには「黒部ダム」があることに気付きました。

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映画「黒部の太陽」にもなった黒部ダムは有名ですが、どこにあるのか皆さんはご存知ですか?「黒部ダム」と一般的に呼ばれているのは、黒部川第四水力発電所のことで、通称「くろよん」の名でも親しまれている関西電力の水力発電用ダムです。
高度成長期の深刻な電力不足を解消するため、関西電力によって計画されたのが、黒部川をせき止めて総貯水量2億m3になる巨大ダムの建設でした。そして峻険な地形や厳しい気象条件などの難問が山積する中、7年の歳月、513億円(当時)の工費、延べ1000万人の労力によって、高さ186m、長さ492mもの巨大なアーチ式ダムが昭和38年に完成。身を乗り出すと足がすくむほどの巨大な壁に圧倒されます。

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さらに、巨大な雪の壁でお馴染みの「立山黒部アルペンルート」にも興味があったので、調べました。
立山黒部アルペンルートは、北アルプス立山連峰を横断する山岳観光ルートで、富山県側は立山駅、長野県側は扇沢駅を玄関口として、バスやケーブルカー、ロープウェイなどを乗り継いで移動します。冬は深い雪に閉ざされるため、全線開通するのは例年4月中旬~11月末。しかも、あの巨大な雪の壁が見られるのが4月中旬から6月中旬ということで、GWは正にドンピシャのタイミングです。アルペンルートが俺を呼んでいる、そんな感じでした(笑)

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立山黒部アルペンルート(JR西日本「西Navi」より)

扇沢駅までは大町市の宿泊先から車で15分ほど。しかし駅前の駐車場は9時前には満車となり、手前の臨時駐車場に車を停めて送迎バスで駅へ向かいました。駐車料金は500円。バスは無料です。
9時頃に着くと券売所に列があり、駅は人で溢れていました。長く待たされて、約1時間半後に関電トンネル電気バスで黒部ダムへ向かいました。6.1kmの距離を16分かけて走ります。この関電トンネルバスは、長らくトロリーバス(架線から供給される電力で走るバス/電車に分類)でしたが、この春から電気バスが登場。電気自動車の時代になって、バスも変わるのですね。

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この関電トンネルは、ダム建設に付随する資材輸送路の一つ「大町ルート」でしたが、断層活動でもろくなった岩盤から地下水と砂利が大量に噴出する「大破砕帯」に遭遇し、建設が一時中断。長さ80mを掘削するのに7ヶ月もの時間を要した難所で、映画「黒部の太陽」にも描かれました。昭和38年に黒部ダムが完成すると、昭和39年から関電トンネルトロリーバスの運行が始まり、今日に至っています。

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黒部ダムに到着すると、一目散にケーブルカーの黒部湖駅を目指して走りました。走ったのはダムの堰堤(えんてい)です。そして、黒部ケーブルカーに乗るための長い列に並びました。

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ケーブルカーは800mの距離で高低差400mという急勾配(最大斜度31度)。国内唯一の全線地下式で、急斜面のトンネルを滑るように上ります。昭和44年の開業以来、一度も車両の更新をしていないため、50年前のレトロな車両を体験できます。

黒部平駅に着くと、ロープウェイを待つ人が溢れていました。黒部湖駅で渡された整理券の番号順に案内されるということで、ホットスナックを買って食べたり、雪景色を見に外に出たりして時間を潰すしかありません。黒部湖駅では1時間余り待つと言われていましたが、45分待ちぐらいでロープウェイに乗車。

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この立山ロープウェイは、山麓の黒部平駅と山頂の大観峰駅との間にロープを支える支柱が1本もありません。距離1700m、標高差488mをワイヤだけで結ぶ日本最長のワンスパン式ロープウェイです。このエリアは雪崩が多く、支柱があるとのみ込まれてしまうためだとか・・・
そのため視界を遮るものがなく、ゴンドラはパノラマの景色を楽しむことができる「動く展望台」です。この日は満員で限られた景色しか見られませんでしたが、たまたま先頭に並べたので、下向きのベストポジションをキープし、後方に広がる後立山連峰や黒部湖の写真が撮れました。山頂の大観峰駅から見下ろす標高2600m級の鳴沢岳や赤沢岳は、絶景です。

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大観峰駅からは立山トンネルトロリーバスに乗ります。関電トンネルバスが今年から電気バスに変わったため、国内最後のトロリーバスになりました。トンネルは立山の主峰・雄山(標高3003m)の直下を貫通しているため、日本一高所(2450m)を走る電車で、3700mの距離を10分で繋ぎます。

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トロリーバスの終点は室堂駅。立山黒部アルペンルートの最高点であり、日本最高所の駅でもあります。扇沢駅の手前でマイカーを降りてから、ここまで来るのに約4時間。「来たーっ」という感じでした(笑)眼下に見えるのは、富山県側から来る立山高原バスのターミナルです。

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いよいよ最大の目的である「雪の大谷」へ。写真や映像で見た時は、相当に不便な場所なのかと想像していましたが、室堂バスターミナルから歩いてすぐの場所にあります。なぜなら室堂周辺は有数の豪雪地帯で、立山高原道路を除雪する際に道の両側にできるのが、あの雪の壁だからです。

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2車線のうち片方をバスが交互通行し、片方は歩行者用の「大谷ロード」になっていました。この日(今年)は一番高い所で16mの高さがあり、バスと比較してみても迫力満点です。「死ぬまでに一度は見たい日本の風景」なんて本がありますが、正に見てきたことを自慢したくなる風景でした。

ここに至るのに、関電トンネル電気バスが往復2570円、黒部ケーブルカーが往復1300円、立山ロープウェイが往復1940円、立山トンネルトロリーバスが往復3240円で、大人1人に9050円もかかります。家族4人(大人3人・小人1人)で行くと3万円以上もかかるので躊躇しましたが、妻がペンキ塗りの方に回ってくれたので、コストを抑えつつ、娘2人と一緒に絶景を目に焼き付けてきました(笑)

岸 未希亜

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