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2019.05.16 / よもやま話

北アルプス 前篇

今年のゴールデンウィークは、元号が令和に変わる特別な10連休でした。10連休を取れた人もいれば、ほとんど仕事をしていた人もいるでしょう。私のGW比率は4:6。仕事が6日、休みが4日でした。
その休みを使って、家族で長野県大町市に行って来ました。大町市に行くことになった理由は、ちょっと変わっています。妻の親友の従兄弟が大町市にログハウスを建てて住んでいて、親友家族がその外壁のペンキ塗りを手伝いに行くため、一緒に遊びに行かないかと誘われたのです。「親友の従兄弟」と言えば全くの他人ですが、私たちは親友の伯父さんや従兄弟とも面識があったので、その誘いに乗っかりました(笑)

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ログハウスの背景には冠雪した北アルプス

渋滞の下りのピークは5月3日と言われていたので、3日の午前0時に家を出ました。深夜にしては車が多かったものの、午前2時過ぎには中央高速道路の諏訪湖SAに到着。車中で朝まで仮眠して午前7時半頃に再出発し、まず向かったのは松本城です。
以前から何度かお伝えしているように、私は日本の城が好きで、天守が現存している12城のうち、宇和島城(愛媛県)を除く11の城には行ったことがあります。松本城も過去に2度訪れましたが、次女が見たいと言うので開門に合わせてやって来ました。松本城は天守が国宝に指定されている5城(他は姫路城・彦根城・犬山城・松江城)の一つです。

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松本城は、見る角度によって違った姿を見せてくれる城です。大天守を挟んで左右に小天守があるため、シンメトリーに近い姿が美しく、堀の反対側から見ると天守が「逆さ富士」のように水面に映り、上下もシンメトリーになっています。
窓がほとんど無く、石落としや狭間を多く設けた戦闘能力の高い松本城ですが、向かって右側には、瀟洒な姿をした月見櫓があります。これは寛永年間(1624~44)に増築されたもので、徳川将軍をお招きする施設だったそうです。右側から見ると、堅牢な大天守と月見櫓のコントラストが際立ち、その背後に北アルプスの山々が広がる光景も見事です。

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向かって左側には、本丸へ渡る朱塗りの橋が架かっていて、この橋と天守を同時に収めるアングルもお勧めです。朝だったので逆光なのと、背景にビルや電波塔が映ってしまうのは玉に傷ですが・・・

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こんな風に写真を撮りながら本丸の入口に向かうと、すでに長い列が出来ていました。係の人が「天守に登るのに3時間待ちです」と説明していてびっくり。嫌がる娘を説得して、登城を諦めました。

代わりに、城の少し北側にある旧開智学校に行きました。明治9年に竣工した校舎(学校は明治6年に開校)は和洋混交の擬洋風建築で、重要文化財に指定されています。設計施工を担当した地元の大工棟梁・立石清重は、上京して参考になる建物を見学したりスケッチをして、校舎の建築に臨んだ記録が残っています。

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旧開智学校は、わが国で最も古い小学校のひとつですが、ここ松本には明治時代を通じて様々な教育機関が併設され、幅広い分野での教育の礎となりました。長野県は教育熱心な県として有名ですが、旧開智学校は信州教育発祥の母胎となり拠点になったようです。

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外から見たことはあったのですが、入場料を払って中に入るのは初めてでした。社会科(歴史)の教科書に載っている建物を実際に見られたことは、娘にも良い経験だったでしょう。

午後は白馬村の奥地へ向かいました。「この先に人が住んでいるのだろうか」と思うような、蛇行する急な山道をズンズン上っていくと、古い民家が現われます。内田康夫サスペンス「信濃のコロンボ」に登場しそうな、人里離れた山奥の村です。

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ここは、2000(平成12)年に重要伝統的建造物群保存地区(以下、重伝建地区)に選定された「白馬村青鬼(あおに)」集落です。村には江戸時代後期から大正期に建てられた茅葺き民家が残っていますが、全てトタン板が被せられています。しかし、その大きな屋根と優しいフォルムは茅葺きを想起させるに十分です。

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集落の奥には、約200年前に山の斜面を雛壇状に刻みこんで造られた「棚田」があり、この農地や山林の一部までが重伝建地区に含まれます。正に農村風景の保全地区なのです。青鬼堰と呼ばれる農業用水路や、幾重にも築かれた石垣の風景は見事で、「日本の棚田100選」にも認定されています。

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棚田を見ながら坂を上っていくと、道の途中に展望スポットがあります。ここで振り返ると・・・

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棚田の奥に元茅葺きの集落が見え、その向こうには北アルプスの雄大な山並みが横たわります。「北アルプス」とは飛騨山脈の通称で、ここから見える五竜岳、鹿島槍ヶ岳はどちらも日本百名山の一つに数えられます。もう数週間遅ければ、水の張られた水田に稲も植えられ、美しい棚田の風景も望めたでしょう。
(続きは、北アルプス後篇へ)

岸 未希亜

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