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2018.08.29 / 建築と住まいの話

美濃市うだつの町並み

皆様

暑い夏をいかがお過ごしでしょうか。

私は盆の時期にお休みをいただき、岐阜県美濃市のうだつの町並みと郡上八幡に行ってきました。美濃市は特にこの夏の天気予報で、最高気温が全国でも上位にランクインされる暑いところです。

今回は美濃市のうだつの町並みの旅について、スケッチも交えて報告したいと思います。

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うだつの町並み

美濃市には長良川鉄道で着きましたが、着いたぐらいから雨が降り出してきました。普段は旅行で傘を入れ忘れない私ですが、なぜか今回は忘れてしまいました。駅前には店もなく、うだつの町並みまでも、歩いて10分程度で、とりあえず雨が弱くなったのを見計らっては屋根のある店や民家の軒先から次の雨宿りできそうなところまで移動して、うだつの町並みを目指しました。
とは言え結構な雨なので、とある道路沿いの民家(店等とも軒を連ね、町家風の民家)の軒先で雨宿りをしていると、たまたま隣家の人が何かの用で玄関から出てきました。私が参ったなあと、雨空を見上げているのを見かねてか、「もう捨てようと思っている折れた傘があるけど、持っていきますか?特に返却はしなくてもいいですよ。」と声を掛けてくれました。困っていた私にとっては思いがけない親切でしたので、お言葉に甘えて、傘を借りる(結局は返却に行ったので)ことにしました。このあとは、傘を差してとりあえずコンビニまで行き、傘を購入した次第です。
今回のこのちょっとした出来事ですが、非常に私にとって助かったことだったので、自分も何か困った人に遭遇したときは、何かできることがあればやった方が良いと感じる出来事でした。

ところで美濃市には江戸時代から続く町並みがあるのですが、そこがうだつの町並みと言われる所以は古い全国の町並みの中でも、一番うだつがある町(うだつが残る家は19棟)だからだそうです。

うだつとはよく?「うだつが上がらない」と言いますが「世俗的な意味での出世が中々できない、金銭的に恵まれる状況にならない、などの意味の表現。」(実用日本語表現辞典から引用)として、現在も使われる言葉の由来となるものですが、屋根の隣家との境界に付く防火壁のことです。江戸時代から明治にかけての家に付くもので、当時、本来は防火壁でしたがやがて豪商たちの富の象徴となったものです。うだつを付ける(上げる)ことができたら、しっかり稼げている家、ということになるのかと思います。

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うだつ-1

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うだつ-2

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うだつ-3

スケッチ、うだつ‐3は明治になってから建てられた建物のうだつです。時代が変わって敷地境界の扱い方も変わったということで、うだつが2個並んで上がっています。本来ですと、境界に1個うだつが上がるのがそれまででした。例えば豪商が両側の境界にうだつを上げたとしますと、隣家は自ら上げた訳でもないですが、隣に接しているので、自分が上げた様にも見えます。隣家両側が上げたら、自ら上げなくても、ぱっと見うだつが上がった家に見えます。よくよく見ればそのうだつは隣家の上げたうだつだと分かると思いますが。
うだつ-3の左の家が先にうだつを上げたそうです。右の家は後に上げて、しかも、少しだけ左の家のうだつより高く上げています。見栄の世界なので、当然高い方が、気分が良いでしょうし、先に上げた左の人は内心面白くないでしょう。このような事態があったことで、その後はうだつが上げられなくなったそうです。(このお話は、旧今井家の館長のお話から引用しました。)

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旧今井家

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旧今井家土蔵2階小屋組み

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旧今井家みせ座敷(商人用の茶室

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みせ座敷展開図、天井伏図

私は古い町並みに来れば、見学できる町家には必ず入ることにしていますが、旧今井家といううだつの家を代表する家があるということでしたので、いつもと同様立ち寄ることにしました。間口がとても広い町家なので豪商であることが分かります。入ると「みせ」という、商売の空間がありその奥の部屋(道路に沿った側)にみせ座敷という茶室がありました。ちょっと面白い茶室だな、と感じたので展開図の形でスケッチしてみました。ただ見るだけだと忘れてしまいがちですが、こうすることで、自分の中で少し印象に残ります。

最後に今回泊まった宿の写真です。

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美濃市の宿

美濃市駅から車で、山の方に10分行ったところにあります。古い民家を改修した宿で、風呂は薪で炊いていました。エアコン無しでしたが、市内よりおそらく標高はいくらか高いでしょうし、山の中といった感じのところなので、夜は非常に涼しかったです。窓を開けて寝ましたが、寝巻きは長袖でも夜中は薄い布団を掛けてちょうど良い気温でした。窓を開けて寝たので、山の中(目の前は畑や水田、小川)ということもあり、虫の音がすごかったです。自然が溢れているところにはこんなにも生き物がいるんだということを、実感しました。今でもその音が耳に残っています。

次回の私のブログでは、今回の旅のもう一つの行き先、郡上八幡について報告したいと思います。

                           住宅事業部 坪田


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