ブログ

2018.08.12 / 建築と住まいの話

庫裡の落慶式

長野市で建築していた曹洞宗寺院・圓福寺の庫裡(くり)については、度々ブログでお伝えしてきましたが、先週、落慶式に参列してきました。落慶(らっけい)とは、社寺などの新築や修理の完成(落成)を祝うことです。
式には檀家や世話人の方々、地域の方々、工事関係者などが集まり、午前9時から始まりました。まずは落慶法要です。初めは本堂で法要を行い、途中から庫裡の玄関に移動しました。

rakkei2.jpg
rakkei1.jpg
玄関に飾られている韋駄天様に向かって経を読み、参列者は庫裡の畳に腰を下ろして見守ります。橙色の袈裟を着ている住職のほかに、21人もの僧侶が集まり、式典を執り行っている様は圧巻でした。

法要が終わると、庫裡から本堂へ移動して開山歴住・先住忌が行われました。読経が行われている間に、親族や世話人が焼香を行います。その他の人々は、お盆に載せた焼香が回って来て、席で焼香を済ませます。

rakkei3.jpg
それが終わると、大施餓鬼会(おおせがきえ)です。施餓鬼会は、お釈迦様に教えを請い、寿命を延ばすことができた阿難(あなん)の説法に基づく行事で、無縁仏や餓鬼に施しをするとともに、新亡の霊や先祖代々の霊を供養する法要だそうです。

rakkei4.jpg
各宗派を通じて行われる仏教行事で、今日ではお盆の前後に行われる場合が多いとのこと。日頃の自分自身に巣くう「餓鬼」の心を反省し、自他ともに生かされている身をしっかり受け止める機会でもあります。

その後は記念式典です。住職のご挨拶の後で、工事関係業者(28社のうち15社が参列)に感謝状が贈られました。建築請負業者であり、圓福寺との関係も深い滝澤工務店を差し置き、設計者ということで私が最初に感謝状を受け取りました。恐縮です(笑)

記念式典が終わると、再び庫裡に移動して太神楽奉納です。庫裡の奥座敷を舞台にして、地元である西横田太神楽保存会による奉納の舞が行われました。参列者は中の間と取次に腰を下ろしての観劇です。

rakkei5.jpg
続く記念撮影は4回に分けて行われました。こんなに大勢の人がいたのか、と驚くほどの人数でした。

rakkei6.jpg
記念撮影が終わったのは12時半過ぎです。熱中症にならないよう、冷たいお茶を飲んだり、トイレ休憩を挟んでの進行でしたが、3時間半余りが経過していました。
そして最後は祝斎です。前述したように人数が多いので、庫裡と本堂に分かれて(両者はすぐ隣にあって雨に濡れずに行き来は可能)席が設けられました。

rakkei7.jpg
檀家の方々の席は、完成した新しい庫裡の座敷・中の間・取次に並べられました。畳の上ですが、ご高齢の方も多いので椅子式の宴席になっています。台所や配膳スペースも整い、セッティングもスムーズだったようです。正にこのために庫裡を新しくしたと言っても過言ではないので、喜ばれている実感が沸きました。

rakkei8.jpg
座敷からは庭を眺められます。すっかり荒れていた裏庭も、古い石などを使って綺麗に生まれ変わりました。

本堂の方はご参集された僧侶の皆様、太神楽保存会の方々、そして工事関係者が席に着きました。いわゆる「お坊さん」がずらっと並んでいる光景は、滅多にお目にかかれないので壮観ですね。

rakkei9.jpg
圓福寺の古い庫裡は築160年以上で、耐用年数ぎりぎりの状態でした。庫裡の建て替えが話し合われ、請負業者は特命で地元の滝澤工務店に決まりました。滝澤工務店は、先代の住職と先代の棟梁時代からの長いお付き合いで、先代住職が現棟梁の名付け親という間柄です。滝澤工務店にとっては一世一代の大仕事でした。
その滝澤さんと15年来の付き合いがある私が、滝澤さんの強い推薦で設計を任されました。神奈川県藤沢市という遠い地からこの大事業に関わることになったことは、「縁」以外の何物でもありません。こうして無事に落慶式を迎え、圓福寺に関わる多くの方々、そして滝澤工務店に報いることができて、安心しました。

岸 未希亜

Category
お知らせ
建築と住まいの話
よもやま話
ロコハウス
書籍・メディア掲載
Archeives