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2015.03.09 / 建築と住まいの話

和の住まいを見に行こう

今週末に開催される「住まいの教室 第6回」では、実際に暮らしている住まいを拝見します。

最初に見学するのは2009年10月に竣工したお住まいで、もうすぐ築5年半を迎えます。同年の8月に入社したばかりの私も、製材所を巡るツアーに同行する形でこの家を見学しました。

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この家の特徴は、何と言っても随所に「和のしつらい」が見られること。

先ずは広い通り土間に靴脱ぎ石が置いてある、お店のような玄関。すぐ横には坪庭があり、通り土間の内側へと庭が連続しています。玄関は全て土間床で、靴を脱いだら障子を開けて室内に上がります。
東から和室、リビング、ダイニングが並ぶ1階は全ての窓に障子が入っています。リビングの上には6畳弱の大きな吹抜けがありますが、この窓にも障子が入っていて、広がり空間に統一感を与えています。
その吹抜け周りや2階は「木組み」が存在感を放ち、特に丸太梁を使った小屋組みが目を引きます。
ダイニングは、家具職人が手造りした無垢板テーブルを囲み、コの字型に畳ベンチが造り付けられた居酒屋のようなスペース。一度腰を下ろしたら長居してしまうことが想像される、居心地の良さそうな空間です。

そして、ご主人が最もこだわったのが外観だったそうです。

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「屋根を低く、傾斜はなだらか、軒は深く」という希望を、担当した高橋が受け止めて形にしました。1階が比較的大きいため、まとまりのある下屋が構成され、高さを抑えた2階屋根とも調和し、プロポーションのよい姿になっています。

この家に住むのは夫婦と3人の子供たち。和室がリビングの一部となる家族スペースの広がりに加え、2階の子供部屋を孤立させない吹抜けの存在など、子育て家族の手本ともいえる間取りです。キッチンの後ろに水回りと収納がまとまり、物干場への動線が集約された使い勝手の良さも参考になるでしょう。


次に見学するのは、昨年の8月に完成したばかりのお住まいで、一度ブログでも紹介しました。前述の建て主とは奥様どうしがお友達(同級生)という間柄ですが、初めから当社に依頼して来た訳ではありません(笑)
自分の好みが確立されている奥様は、自分の眼鏡に叶う工務店を絞り、ある会社を選んでプラン提案まで受けたそうです。しかし提案に納得することができず、遂に当社を訪ねてくださいました。

odawara21.jpg 参考イメージとして持参した林芙美子記念館の写真

私は2度目の来社時にお会いして、築3年のお住まいと私の自邸を案内したのですが、移動の車の中で「和の家」に対する奥様の熱い想いを聞き、この人は自分と考え方が似ているからきっと上手くいくな、と感じていました。一方、奥様は「設計者の自宅を見られたことで安心できた」と後で教えてくれました。

こちらも外観に対するこだわりは強く、「軒を出して高さは控えめに」という条件付きで、初めから「平屋建て」を希望されました。「蕎麦屋のような外観」にしたいという話も出ましたが、切妻を組み合わせた端正な屋根形状と一文字瓦のシャープな軒先によって、「料亭のような外観」に格上げされています(笑)

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「和のしつらい」はこちらも負けていません。先ずは、和食のお店のような雰囲気を醸し出す玄関。人を迎える凛とした空気感があります。
リビング・ダイニングの大きな開口部には4本の障子が並んでいます。寝室や客間は全て畳敷きなので、この家にはカーテンがありません。また、天井までの壁と開口部のバランスや、障子や襖のプロポーションの美しさを考えて、内法高さを昔の寸法に近い1800にしている点もポイントです。
家具職人が手造りした栗のダイニングテーブルとベンチや、大工造りのキッチンと食器戸棚も家の雰囲気に合っています。

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この家に暮らすのは夫婦と子供の3人家族ですが、将来、親と同居することも考慮しています。あるいは平屋の家ということで、老後の夫婦だけのお住まいとしても参考になる間取りです。
また「起きている時の空間と寝る部屋があればよい」という考え方に基づき、子供部屋がないのが特徴です。これはちょっとした驚きですね。

どちらの家も、今どき珍しいぐらい徹底した和の造りです。
共通するのは、希望が明確でありながら、想いをぶつけた後はプロに任せるという懐の深さでしょうか。そして家づくりを心から楽しんでいたことです。
2組とも気さくなお施主様ですので、計画中の話から住み心地まで、何でも語ってくれるはずです(笑) ぜひ、希望の家を手に入れるコツを聞いてみてください。

岸 未希亜

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