ワールドカップ(以下、W杯) 2026 北中米大会の決勝が行われ、スペインがアルゼンチンを退けて16年(4大会)ぶり2度目の優勝を果たしました。

朝日新聞7月21日朝刊より
読者の中で決勝戦をリアルタイムでご覧になった方はいるでしょうか? もちろん私は見ました(笑)
世界ランキング1位で前回W杯王者かつ南米選手権王者のアルゼンチンと、世界ランキング2位で欧州選手権(以下、EURO)王者のスペイン。考え得る最高の組み合わせになりました。そして両者のプレースタイルが大きく異なる点も面白いところです。

サッカーマガジン2026.6増刊号より
アルゼンチンにはリオネル・メッシという異次元のタレントがいます。メッシはクラブチーム(FCバルセロナ)で数々のタイトルを獲得したのに反し、代表ではずっと結果を残すことが出来ませんでした。メッシに依存してしまう形がずっと機能しなかったのですが、2022年カタール大会では、35歳になったメッシを守るようにGK以外の9人がメッシの分まで走り回る、メッシ・システムを確立して優勝。4年後の今大会も、39歳の「走らないメッシ」が要所でゴールやアシストを重ねて決勝戦に進みます。

サッカーマガジン2026.6増刊号より
スペインは世界で一番ボール回しが上手い国です。ピッチ上に幾つものトライアングル(三角形)を作り、常に適切な位置にサポートが入るので、敵の圧力を受けたらダイレクトで味方にボールを渡し、リターンパスを受けて前を向くことができます。これをフィールド全体で行うため、滅多にボールを失うことが無く、失ってもすぐに相手を囲んで奪うことができるので、カウンターを受けることもほとんどありません。準決勝のフランス戦は圧巻でした。準決勝までの7試合で6勝1分け失点1、国際大会37試合無敗(準決勝終了時点)という恐るべき安定感です。
W杯では2010年南アフリカ大会で初優勝したものの、その後は3大会連続でベスト8にも進めない低迷期を送りました。しかしラミン・ヤマル、ニコ・ウィリアムスという強力なサイドアタッカーを得たことで、2年前にヨーロッパチャンピオンに上り詰めたのです。

Sports Graphic Number1148号より
決勝戦は予想通り、スペインがボールを支配してアルゼンチンが守備からカウンターを狙いますが、メッシにボールが入っても自由にさせないスペインの守備があるため、一方的な展開になりました。前後半90分でのシュート数「0」は衝撃の数字で、延長含む120分でのシュート数「スペイン20:アルゼンチン2」にも表れています。
サッカーでは、ゴールを決めるストライカーや決定的なチャンスをつくるゲームメーカーの存在が時代を彩ってきました。今大会でもメッシ、エムバペ、オリーセ、ベリンガム、ハーランド等が脚光を浴びています。しかしスペインには彼らのようなスーパースターは存在しません。代わりに全員が高い技術を持ち、どこからでも攻撃を仕掛けられます。メンバーが変わってもクオリティが落ちないのは、育成年代からスペインのコンセプト・方針が一貫していることが大きいのです。技術、個人戦術、グループ戦術のクオリティについては、サッカー経験者ならしみじみ分かると思います。本当に凄いです。

ワールドサッカーダイジェスト9月5日号増刊より
メッシ以降のアルゼンチンしか知らない人は、アルゼンチンのプレーがダーティー(汚い)なことに驚いたかもしれませんが、あれこそアルゼンチンです。技術もあるが狡猾で、身体の使い方が上手く、時にはファウルも辞さない激しさで闘う姿勢はアルゼンチン選手のDNAに受け継がれています。
VARで証拠映像が出てしまう時代になっても、激しさや狡猾さは変えられません。延長前半、直前のプレーにファウルがあったとして、ニコ・ウィリアムスが決めたゴールは認められませんでしたが、オタメンディ(アルゼンチンDF)の演技に主審も騙されました。VARが発動していれば絶対にバレたのに(笑)
準決勝2試合も面白かったですね。

朝日新聞7月16日朝刊より
個人的に優勝候補筆頭だと思っていたフランスが、スペインの前に沈黙。後で知ったのですが、両者はEURO2024準決勝、ネーションズリーグ2025準決勝でも対戦し、いずれもスペインが勝利。スペインには自信、フランスには苦手意識が働いていたかもしれません。

朝日新聞7月17日朝刊より
アルゼンチンとイングランドは因縁の対決。1986年メキシコ大会での、マラドーナによる「神の手」と「5人抜き」の2ゴールは伝説になっていますし、2大会に渡るベッカムvsシメオネの因縁も有名。試合はイングランドが先制したものの、守りに入るのが早過ぎて終盤はアルゼンチンの猛攻を受け、ドラマチックな逆転負けを喫しました。

朝日新聞7月7日朝刊より
準々決勝では、スペインvsベルギーが面白かったです。ラウンド16では、フランスvsパラグアイ、ノルウェーvsブラジル、アルゼンチンvsエジプトの試合が印象的でした。
日本はラウンド32でブラジルに敗れ、またも決勝トーナメントで勝利を上げられませんでした。参加国が32から48に増えたため、成績としては前回、前々回のベスト16を下回るベスト32止まり。1位で抜けてもモロッコ、2位で抜けるとブラジルというトーナメントは、明らかにくじ運には恵まれませんでしたが・・・
日本戦はもちろん全部ライブで見ました。オランダ戦の同点ゴール、チュニジア戦のゴールラッシュ、スウェーデン戦では主力の一部を休ませながら確実に引き分けるなど、予選リーグの戦いは良かったです。
ラウンド32の対戦相手ブラジルは、サッカーに詳しくない人でも知っているサッカー大国。23大会連続23回目の出場も唯一無二であり、最多の優勝5回を誇ります。予選リーグに関しては最近10大会連続で1位通過、日本は2006年ドイツ大会で1-4と惨敗しました。つまり「格下相手には滅法強い」というイメージがあり、日本はもちろん格下と見られています。

Sports Graphic Number 7/23特別増刊号より
2006年以降のブラジルは、自国開催の2014年大会(4位)以外は4度もベスト8止まりで、今回は優勝候補にも挙がっていません。日本にも少なからずチャンスはありましたが、実際に戦った選手たちにかかる圧力は大きかったようです。あれだけ防戦一方になったのは1対1の攻防で後手を踏んだからで、ゲームチェンジャーの存在が必要でした。つくづく三笘選手の離脱が痛かったと思います。
トーナメントで2勝してベスト8に入ることがいかに難しいか、改めて今大会で明らかになりました。日本は「優勝」などと言わず、誰憚ることなく「ベスト8」を目指してほしいと思います。
岸 未希亜

