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2026.03.12 / よもやま話

ミラノ・コルティナ五輪名場面

ミラノ・コルティナオリンピックが閉幕して時間が空きましたが、遅ればせながら冬季五輪を振り返ろうと思います。皆様の心に残ったシーンと少し違うかもしれませんが、私が選ぶ私的ベスト5です。
第5位は、フリースタイルスキー・男子スキークロスの古野慧選手です。

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朝日新聞2月23日朝刊より

スキークロスという競技は、ジャンプやバンク(傾斜)、ウェーブ(起伏)などの障害物が設置されたコースを同時に4人で滑走して着順を競う種目で、これをライブで見ました。細かな技術はあると思いますが、見た目にはシンプルな競争なので、予備知識が無くても単純に楽しめます。
古野選手は北京五輪にも出場しているのですが、1回戦でスタート直後に転倒してしまい、爪痕を残すことができませんでした。今大会は、予選タイムレースで全体2位の好成績を収めたことで組み分けも有利になったのでしょう。上位2名が次のステージに進むレースを2つ勝ち上がります。準決勝は序盤から4番手に下がるのですが、2位と3位の2人が接触する隙を突いて2位に浮上した時は「よしっ」と声が出ました。
決勝戦は4人のうち3人が表彰台に上がれる訳ですが、3位と0.08秒差で惜しくも4位に。メダル獲得はなりませんでしたが、ハラハラするレース展開と最後まで粘った古野選手の走りが印象に残りました。

第4位は、スキージャンプ・女子ノーマルヒルの丸山希選手です。4年前は五輪出場確実と言われながら、4ヶ月前の試合で転倒して大怪我を負い、北京五輪には出場できませんでした。

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Sports Graphic Number臨時増刊号より

スキージャンプ女子と言えば、高梨沙羅選手、伊藤有希選手が日本を牽引して来ましたが、丸山選手は今シーズンのワールドカップ(世界を転戦して年間王者を争う)開幕戦で初優勝を果たすとここまで6勝。優勝を狙える新エースとして五輪を迎えました。
しかしジャンプ台の特徴をつかみ切れず、公式練習の記録は思わしくありません。コーチと話し合って助走姿勢の修正を試み、ノーマルヒル当日の試技で好感触を得ると、1本目は97mで全体3位に。2本目も100mの大ジャンプで3位を死守し、初出場で銅メダルを獲得しました。高校3年の冬に病気で亡くなったお母さんから「何かで一番になりなさい」と言い聞かされてきた彼女は、これから世界一を目指します。

第3位は、スピードスケート・女子(4種目)の高木美帆選手です。言わずと知れたスピードスケート界のスーパースターで、今大会が最後の五輪と言われていましたが、先日今季限りでの引退を発表しました。

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Sports Graphic Number臨時増刊号より

高木選手は2010年バンクーバー五輪に、日本スピードスケート史上最年少の15歳(中学3年生)で初出場。1000mでは最下位、団体パシュートは補欠でレース不出場だったため、受け取れなかった銀メダルを首にかけてもらうシーンがありました。4年後のソチ五輪は成績が低迷して出場を逃しますが、2018年平昌五輪では1000mで銅メダル、1500mで銀メダル、団体パシュートで金メダルを獲得します。2022年北京五輪はキャリアのピークと重なり、1500mと500m、団体パシュートで銀メダル、1000mでは個人種目として初の金メダルを獲得しました。
今大会も1000m、500m、団体パシュートで銅メダルを獲得。団体パシュートの準決勝は、先行するオランダとのタイム差を徐々に詰め、最終ラップの前に逆転しますが、ラスト1周で再逆転されての惜敗。リアルタイムで見ていたので、熱くなりました。決勝でカナダと対戦してほしかった・・・。

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朝日新聞2月22日朝刊より

そして最終種目の1500mを迎えます。スプリント能力と持久力を求められる1500mは最も難しい距離と言われていますが、オールラウンダーの高木選手にとっては逆に強みを発揮できる距離が1500mでした。2019年にマークして未だに破られていない世界記録保持者であり、大本命で迎えた4年前の北京五輪で金メダルを逃したこともあって、今大会の1500mに全てを懸けて臨みました。
序盤からハイペースで飛ばし、最後はスタミナを発揮して粘るのが高木選手の滑りですが、31歳の身体には厳しくなっており、今大会も最終ラップを大きく落として6位に沈みました。しかし五輪の金メダルが無くても、スピードスケート界における「高木美帆」の地位は揺るぎません。現役ラストレースとなった世界オールラウンドスピードスケート選手権が、先日オランダで行われましたが、総合3位で表彰台に上がり「生けるレジェンド」とアナウンスされていました。

第2位は、フリースタイルスキー・男子モーグルの堀島行真選手です。

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Sports Graphic Number臨時増刊号より

モーグルといえば、長野五輪金メダルの里谷多英さん、4大会連続入賞(メダルには届かず)の上村愛子さんが思い出されます。上村さんは世界ランキング1位やワールドカップ総合優勝を果たしながら、五輪のメダルだけは取れませんでした。堀島選手もワールドカップで実績を残しており、今年は世界ランキング1位で3度目の五輪を迎えます。4年前の北京五輪で銅メダルを獲得している彼が目指すのは金メダルのみ。そのため、欧州最大の室内スキー場があり、ミラノと時差のないノルウェーのオスロに、五輪の2年前に家族で移住したほどです。

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朝日新聞2月14日朝刊より

モーグルはターン60点、エア20点、タイム20点の合計100点満点で採点されるのですが、ターン技術が頭抜けている堀島選手は金メダルを確実にするため、エアで「コーク1440」という斜め軸4回転の大技に挑みました。決勝の滑りを見終えた時は「勝ったのでは」と思いましたが、エアの得点が伸びずに僅差の3位。ターン+スピードではトップだったものの、上位3人の中で一番難しいエアを飛びながら一番低い点になってしまったのは残念でした。
先日、日本人男子として初めて、2025-26シーズンのワールドカップ男子モーグルの総合優勝を達成。アルペンスキー競技は五輪が全てではないのですが、それでも4年後のパリ五輪で金メダルを取ることを願わずにはいられません。

そして第1位は、フィギュアスケート・ペアの三浦璃来選手&木原龍一選手です。

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Sports Graphic Number臨時増刊号より

「りくりゅう」ペアについてはここで語る必要が無いほど、大会中から2人の物語が多くのメディアで伝えられています。ご承知のように、日本でフィギアスケートと言えば女子シングルと男子シングルが注目され、ペアは影の存在でした。五輪競技に団体戦が導入されることが決まり、日本スケート連盟が白羽の矢を立てたのが当時シングルの選手だった木原選手。ペア転向後、高橋成美さんとソチ五輪に出場、須崎海羽さんと平壌五輪に出場した後、引退も考えていた時に三浦選手とペアを結成します。
カナダを拠点に演技力を磨き、2023年と2025年の世界選手権優勝、22-23シーズン、25-26シーズンのGPファイナル優勝という実績を引っ提げて、五輪の金メダルを取りにミラノへやって来ました。
団体戦では、ショートプログラム、フリーともに素晴らしい滑りで銀メダル獲得に貢献。

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朝日新聞2月17日朝刊より

ところが、個人戦のショートプログラムでリフトに痛恨のミスが出て、6.9点差の5位と出遅れます。演技終了から10秒以上も動けない木原選手を見た時は、見ていたこちらも辛かったですね。フリー当日の朝まで気持ちを立て直せなかったそうですが、三浦選手の励ましもあってフリーではノーミスの演技を披露。フリーの歴代世界最高得点158.13点をマークし、逆転優勝を果たしました。
優勝候補として金メダルを期待されながら金メダルを取ることの難しさ。フィギュアスケート・ペアに光を当てたいという強い想い。そして木原選手のスケート人生を辿ってみた時、この金メダル獲得は本当に素晴らしいシーンだったと思います。素直に感動しました。

岸 未希亜

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