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2024.08.21 / よもやま話

パリ五輪を回想して

パリ・オリンピックが閉幕しました。日本とパリの時差は7時間のため、夜に試合が行われると日本時間の午前2時や4時ということになり、ライブ観戦はなかなか難しかったですね。私はサッカーについては男女とも予選リーグからほぼライブ観戦しましたが、どちらも準々決勝敗退でメダルを逃しました。

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朝日新聞8月4日朝刊より

今大会は金メダルが20個、総メダル数が45個で、いずれも海外で開催された五輪メダル数の最多記録を更新しました。お家芸と言われる柔道、レスリング、体操は期待に違わぬメダルラッシュで、近年安定して高成績を残している卓球女子、バドミントン女子ダブルス、東京五輪から採用のスケートボードは期待通りでした。一方で前評判の高かったバレーボール男子や東京五輪銀メダルのバスケットボール女子は残念な結果に終わりましたね。

それでは、私の記憶に残った出来事をお届けします。
1つ目はフェンシングのメダルラッシュです。

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朝日新聞8月6日朝刊より

フェンシングは全身が有効面のエペ、胴体(頭と腕を除く)が有効面のフルーレ、上半身が有効面のサーブルという3種目に分かれています。また、エペとフルーレが「突き」だけの競技なのに対して、サーブルには「突き」と「斬り(カット)」があるのが特徴です。さらにフルーレとサーブルでは、先に腕を伸ばして剣先を相手に向けた方に「優先権」が与えられ、「優先権」を奪い返す攻防も生じることから、素人ではどっちにポイントが入ったのかよく分かりません(笑)
2008年北京五輪で、太田雄貴さんがフルーレ個人で日本初の銀メタリストになり、2012年ロンドン五輪ではフルーレ男子団体が銀メダルを獲得。日本でも俄かにフェンシングが注目を集めるようになり、東京五輪ではエペ男子団体が金メダルを獲得して「エペ」の存在を知らしめ、今大会は男女とも大活躍でした。

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読売新聞社「パリオリンピック激闘の記録」より

まずはエペ男子個人で、加納虹輝選手が世界ランキング1位にまで登り詰めた実力を如何なく発揮して、五輪では個人種目初の金メダリストに。エペ男子団体は惜しくも1ポイント差で優勝を逃して銀メダルでしたが、2大会連続の表彰台は見事でした。フルーレ男子団体も世界ランキング1位の実力を誇り、決勝でイタリアを破って五輪では初の金メダルを獲得しました。
サーブル女子個人では、世界選手権2連覇中で金メダル最有力候補だった江村美咲選手が、まさかの3回戦敗退となりましたが、サーブル女子団体では地元フランスを破って銅メダルを獲得しました。女子フルーレ団体もカナダを破って銅メダルを獲得し、団体に出場した4種目全てでメダルを獲得しました。

2つ目は飛込競技で五輪初メダルとなった玉井陸斗選手です。

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朝日新聞8月12日朝刊より

飛込競技は1904年セントルイス五輪から実施されている伝統種目で、高さ3mの飛板の反発を利用する板飛び込みと、10mの高さの台から飛び込む高飛び込みがあります。2000年シドニー五輪から2人の演技の同調性を見るシンクロが加わり、男女8種目が行われています。
この競技は中国が圧倒的に強く、私も過去に何度もその光景を目にして来ましたが、10m高飛び込みで玉井選手が遂に日本初のメダリストになりました。5回目(全6回)の演技で着水が乱れて順位を落としましたが、最終6回目で全選手最高の演技を見せて逆転での銀メダル獲得となりました。

3つ目は体操男子団体の金メダルです。

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Number1102号より

男子体操団体は2004年アテネ五輪で28年ぶりの金メダル、2008年北京五輪と2012年ロンドン五輪で銀メダル、2016年リオデジャネイロ五輪で金メダル、2021年東京五輪で銀メダルという風に安定した力を誇っています。今大会は中国との一騎打ちと見られていましたが、エース橋本大輝選手のミス(あん馬の落下)もあって中国にリードを許し、最終種目(鉄棒)を前に3.267もの大差を付けられました。3人が中国選手を1点ずつ上回っても追いつかないという、絶望的な(普通に考えて逆転不可能な)差でしたが、ここから奇跡的な逆転劇が起こります。

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朝日新聞7月31日朝刊より

日本は1番手の杉野正尭選手が14.566。中国1番手の肖若騰(ショウ・ジャクトウ)選手はやや低い13.433。日本2番手の岡新之助選手が14.433。その後、中国2番手の蘇煒徳(スーウェイデ)選手が離れ業で2度も落下(2.0の減点)したため11.600という低スコアに終わり、中国の2人目までの合計は25.033。日本は2人の合計が28.999なので、日本が逆に0.699のリードを奪いました。3番手の橋本大輝選手は鉄棒が得意なので、「普通に」できれば逆転されることはありませんが、落下や大過失が一番起こり得るのが鉄棒です。会場全体が緊張感に包まれる中、橋本選手は難度を落として(Dスコア6.7から6.3に変更)見事に演技を全うし、14.566の高得点。中国を振り切って2018年以来の団体優勝を奪還しました。

4つ目は、バドミントン混合ダブルスのワタガシ(渡辺勇大・東野有紗)ペア、女子ダブルスのシダマツ(志田千陽・松山奈未)ペアの銅メダル獲得です。

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読売新聞社「パリオリンピック激闘の記録」より

混合ダブルスのワタガシペアは東京五輪でも銅メダルを獲得して一躍有名になりました。中学生の時に初めてペアを組んだ先輩後輩の間柄というのも知られ、この3年はテレビでもよく目にしました。パリ五輪の試合も見ていましたが、子供も親しむ身近なスポーツだからこそ、競技とのギャップが面白いです。

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読売新聞社「パリオリンピック激闘の記録」より

女子ダブルスは、2008北京五輪でスエマエ(末綱聡子・前田美順)ペアが4位(3位決定戦で敗戦)、2012ロンドン五輪でフジガキ(藤井瑞希・垣岩令佳)ペアが銀メダル、2016リオ五輪でタカマツ(高橋礼華・松友美佐紀)ペアが金メダルというように、近年は好成績を残している種目です。東京五輪ではフクヒロ(福島由紀・広田彩花)ペア、ナガマツ(永原和可那・松本麻佑)ペアが共に準々決勝で敗退しましたが、両者は五輪前には世界ランク1位も争っていた実力者でした。
パリ五輪では2大会連続出場のマツナガペアが予選敗退したものの、シダマツペアが3位決定戦に勝って銅メダルを獲得。試合は見ているだけで力が入りました。可愛らしさも相まって一躍「時の人」です。

そして最後は、陸上女子やり投げの北口榛花選手が獲得した金メダルです。

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朝日新聞8月12日朝刊より

うっかりライブ観戦を逃してしまいましたが、陸上競技女子ではフィールド種目・トラック種目を通じて初の金メダルです。男子でも戦前に三段跳びで3大会連続の金メダルと、2004アテネ五輪のハンマー投げで室伏広治さんが金メダルを獲得しただけなので、偉業中の偉業だと言えるでしょう。
北口選手はジュニア時代、水泳とバドミントンで全国大会出場するなど、スポーツ万能な少女でしたが、高校から陸上競技(やり投げ)を始めるとすぐに頭角を現し、高校3年時には世界ユース選手権優勝も果たしました。伸び悩んだ時期もあったそうですが、やり投げ大国のチェコに単身乗り込み、2023年の世界陸上で金メダルを獲得するまでに成長してパリ五輪を迎えました。
1投目で予選通過ラインをクリアしたため予選成績は5位でしたが、決勝の1投目に65.80mを投げ、それがそのまま優勝を決める一投になりました。スポーツ万能な少女が「やり投げ」に集中し、心技体を磨き上げて臨んだ大舞台でのビッグスロー。女王と呼ぶに相応しい見事な結果でした。

番外編は陸上男子110mハードルの村竹ラシッド選手です。

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朝日新聞8月10日朝刊より

男子100mのサニーブラウン選手は、9秒96の好タイムを残しながら決勝の8人に残れませんでしたが、村竹選手は決勝に進出しただけではなく、銅メダルとの差0秒12という僅差で5位入賞。五輪の陸上男子短距離種目では歴代最高の成績を収めました。
この種目には、世界陸上で日本勢初の決勝進出を果たした泉谷駿介選手もいて、互いに刺激し合いながら頂点を目指してきました。日本人が夢見る短距離種目でのメダリスト誕生を待ちましょう。

もう一人はテニス男子シングルスで金メダルを獲得したノバク・ジョコビッチ(セルビア)です。
ジョコビッチはテニスの四大大会(全豪・全仏・ウインブルドン・全米)の通算獲得数24(男子では1位)のレジェンドで、キャリア・グランドスラム(4大会全ての優勝)達成者がオリンピックも制すると「キャリア・ゴールデンスラム」と呼ばれますが、男子ではアンドレ・アガシ、ラファエル・ナダルに続く3人目の快挙でした。パリ五輪決勝の相手は現在最強と目されるアルカラス(スペイン)でしたが、今年のウインブルドン決勝で敗れた21歳を相手に、未だテニス界に君臨する37歳が勝利を収めて涙する姿に感動しました。

岸 未希亜

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