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2022.12.08 / よもやま話

ワールドカップ ベスト8の壁

ワールドカップ(以下、W杯)2022カタール大会の決勝トーナメント1回戦が終わりました。
日本はグループリーグ初戦でドイツに勝利した後、コスタリカに0-1で敗れましたが、スペインには2-1で勝利し、ドイツ、スペインという優勝経験国と同居したグループEを首位通過しました。開幕前には予想もできなかった結果で、日本国中がお祭り騒ぎのようになりましたね。

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朝日新聞12月3日朝刊より

しかし決勝トーナメント1回戦は、クロアチアとPK戦にもつれ込んで敗れました。もう一歩という所まで進みながら、前回大会の逆転負けに続き、ベスト8進出はならず。
一喜一憂したこの2週間を、サッカー愛好家の独り言に付き合ってください(笑)

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Number12/15臨時増刊号より

先ずはグループリーグ第2戦。日本はドイツ戦から先発メンバーを5人入れ替えてコスタリカ戦に臨みました。コスタリカは初戦でスペインに0-7の大敗を喫していたため、本来の堅守速攻でやって来るのか、それとも積極的に点を取りに来るのか分かりませんでしたが、始まってみると5-4-1の陣形で2列の守備ブロックをしっかり作って前に出て来ません。守備を固める相手を崩すのは難しく、特に堅守を売りにするW杯出場国にここまで守られたら、そう簡単には得点できません。

後半に選手交代をしても突破口が見出せず、じれったい展開になっていたので、「もっと縦パスを入れろ」と思って見ていました。しかし「カウンターを食らいたくない」「嫌な形でボールを失いたくない」という気持ちの表れか、横パスの連続になっているようでした。

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朝日新聞11月28日朝刊より

それなら「0-0の引き分けでいい」と割り切れば良かったのですが、終盤にゴール前での中途半端なプレーから失点。コスタリカが人数をかけて攻めて来たのはこの時を含めて2回だけでしたが、それをゴールに結びつけられてしまいました。日本はコスタリカに0-1で敗れ、1勝1敗の2位ながら、最終戦の結果次第では予選敗退もあり得る状況となりました。

そして第3戦。スペインは第2戦でドイツと引き分けたため、1勝1分の勝ち点4でグループ首位。最終戦でドイツがコスタリカに勝てば、日本に負けても予選突破する可能性が高いため、あえて2位通過して準々決勝のブラジル戦を避けるのではないかという噂も聞こえましたが、果たして・・・

日本は試合開始から3バック(5バック)のシステムで入りました。スペインは4-3-3(4-1-2-3)なので、4バックの4-2-3-1の方がシステム的に噛み合って守りやすいと思ったのですが、何とコスタリカのように2列のブロックを敷いた5-4-1で、スペースを与えない守備的な作戦を選びました。
元々ボール支配率の高いスペインですが、日本が重心を下げたためにほとんど日本陣内でサッカーが行われることになり、前半11分に右からのクロスをヘディングで決められて失点。その他にピンチらしいピンチはありませんでしたが、圧倒的にボールを支配されて0-1で前半を折り返しました。

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Number12/15臨時増刊号より

日本は後半開始から堂安選手と三笘選手を投入し、前からのプレスを強めました。スペインも予期していたとは思いますが、自分たちのスタイルに自信とこだわりをもつため、あくまでショートパスを繋いでかわそうとします。それがプレスの餌食になって、後半3分に堂安選手の強烈なミドルシュートで同点。
さらに後半6分、堂安選手がペナルティエリア内で右から入れたクロスがゴールラインを割る寸前、三笘選手が折り返して田中選手が逆転ゴール。テレビではラインを割ったように見えましたが、ライン上に2mm弱かかっていたとのこと。VAR判定によってもたらされた「奇跡」が日本を救いました。

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朝日新聞12月3日朝刊より

その後もスペインがボール支配で勝りますが、日本は集中力を切らさずに1対1の局面でも奮闘。ドイツ対コスタリカの試合経過とともに、予選突破か敗退かが刻々と入れ替わるスリリングな展開になります。終盤は日本が同点に追いつかれると予選敗退になる状況でしたが、しっかり勝ち切って胸を撫でおろしました。

決勝トーナメント1回戦の相手はF組2位のクロアチア。前回2018年ロシア大会の準優勝国です。ドイツやスペインのような圧倒的な力は無いものの、技術が高く、粘り強く勝利を手繰り寄せる嫌らしいチームという印象があります。
スペインと同じ4-3-3(4-1-2-3)のクロアチアに対して、日本はこの日も3バックの3-5-1。ディフェンスラインで人が余るため、前線からのプレスが効きにくい難点を抱えますが、前田選手のスプリント力がそれを補います。予選リーグの3試合とは違って、前半は互いに攻め合うオープンな展開が続きました。
そして前半終了間際の43分、ショートコーナーから堂安選手が蹴ったライナー性のクロスを吉田選手が折り返し、前田選手がボレーシュート。願ってもない時間帯に待望の先制点が入りました。クロスボールの質も良かったし、折り返しに反応していた前田選手も良かった。テレビの前で叫びました!

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朝日新聞12月7日朝刊より

今大会初めてリードして後半を迎えたこと、そして延長戦もあるためか、ハーフタイムでのメンバー交代はなし。すると後半10分、右サイドからのクロスをペリシッチにヘディングで決められ同点。冨安選手と伊東選手の間にポジションを取られ、マークが甘くなりましたが、あの距離からヘディングで決めるのは見事でした。
後半19分になって、三笘選手、浅野選手を投入しますが、クロアチはむやみに逆転を狙わず、ボールをキープしながら試合を落ち着かせていたため、ゴール前の決定機が減って淡々と進んで行った印象でした。
驚いたのは延長前半、攻撃の中心で大黒柱のモドリッチとコバチッチを交代させたことです。点を取りに行ってカウンターを食らうよりも、守備を安定させて「PK戦になっても勝つ」という強かな戦略を見ました。

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朝日新聞12月7日朝刊より

PK戦の結果は皆さんご存知の通り。日本は4人のうち3人が外して敗れました。
PKの失敗はよく連鎖反応を起こします。蹴る技術、練習はもちろん大切なのですが、何があっても動揺しない強い気持ちが必要です。それでも、PK失敗は誰も責められません。

今だから言う訳ではないですが、この試合の私の予想は0-0のPK戦でした。そして延長後半にGKをシュミット・ダニエルに代えて、PK戦で心理的優位に立つという戦略も持っていました(笑)
PK戦の直前に相手GKが代わったら、蹴る方は否が応でも意識します。身体も権田選手より大きくて威圧感もありますし、絶対に出してほしかった。試合中もずっと「シュッミット出せ」と言い続けていたのですが。

今大会の日本は、ドイツ、スペインという強豪国に対し、相手に圧倒的な力があることを認め、ボールポゼッションを捨てて守備を固める戦術を選択。この現実路線は2010年のW杯南アフリカ大会の岡田監督と同じです。ただ、当時より強い相手だったにもかかわらず、5人の交代枠を最大限に生かしたシフトチェンジで勝ち切った点は見事でした。

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Number12/15臨時増刊号より

しかし、主導権を握れたはずのコスタリカ戦、互角の勝負を挑んだクロアチア戦ではチーム戦術に物足りなさが残りました。選手たちも「今回のサッカーではその先が無い」と発言しているように、強豪国に伍して戦える「日本のサッカー」は必要です。
ただ、ブラジルやフランスといった強豪国は、自分たちのサッカーで相手を振り回すことができますが、日本は違います。日本の立ち位置を考えると、優勝を狙う強豪国との対戦、力関係が拮抗している国との対戦、確実に勝たなければいけない国との対戦、どうしても戦い方の幅が必要になります。
日本サッカーの戦い方を探りながら、4年後にはベスト8の壁をこじ開けてほしいと願います。

さて、日本が負けてもW杯は終わりません。むしろこれからが本番。準々決勝が一番面白いと言われているので、今週末は寝不足になりそうです。

岸 未希亜

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