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2022.11.26 / よもやま話

ワールドカップ開幕 ドイツ戦

ワールドカップ(以下、W杯)2022カタール大会が11月21日に開幕しました。

これまでの大会は、ヨーロッパのオフシーズンである6~7月に開催されていましたが、中東のカタールが酷暑のため、今大会は各国リーグを中断して11~12月に開催されています。そのため選手のコンディションは上がった状態ですが、チームとしての準備期間はほとんどなく、クラブチームの試合でケガをして出場を断念するケースも見られました。

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サッカーマガジン11月号増刊 表紙

出場32ヶ国は8組×4チームにグループ分けされて予選リーグを戦い、上位2ヶ国だけが決勝トーナメントに進みます。W杯抽選に用いる「ポット」は2022年3月31日発表のFIFAランキングの順位で決まります。
・【ポット1】開催国(カタール)、FIFAランク上位7カ国
・【ポット2】FIFAランク上位8位~15位
・【ポット3】FIFAランク上位16位~23位
・【ポット4】FIFAランク上位24位~28位、大陸間プレーオフ勝者2カ国、欧州予選プレーオフ勝者1カ国

ポット1(第1シード国)には、カタール(51位/開催国)、ブラジル(1位)、ベルギー(2位)、フランス(3位)、アルゼンチン(4位)、イングランド(5位)、スペイン(7位)、ポルトガル(8位)が入り、抽選によって振り分けられました。ちなみに6位のイタリアは予選敗退で出場していません。

ポット2には、メキシコ(9位)、オランダ(10位)、デンマーク(11位)、ドイツ(12位)、ウルグアイ(13位)、スイス(14位)、アメリカ(15位)、クロアチア(16位)の8カ国が入りましたが、【ポット1】から漏れた強豪国がどこに入るかが注目されます。当然ながらどの国もカタールのいるグループAに入りたい訳で、その座を射止めた幸運な国はオランダでした。W杯開幕時にはFIFAランク8位に上昇していたオランダは、実質的にポット1クラスなので、他の組に入っていたら「死のグループ」になっていたところです。
このポット2ではドイツ(開幕時11位)、クロアチア(開幕時12位)が優勝争いに絡む強豪国ですが、ドイツはスペインと同じE組に入り、クロアチアはベルギーと同じF組に入りました。ポット3以下の国にとって、この2組は避けたいところです。

ポット3には、セネガル(20位)、イラン(21位)、日本(23位)、モロッコ(24位)、セルビア(25位)、ポーランド(26位)、韓国(29位)、チュニジア(35位)の8カ国が入りました。13カ国出場している欧州を除き、同じ連盟(アジア/アフリカ/北中米/南米)の国が同組になることはないので、抽選の際に組み分けを調整していきます。

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そして日本は、スペイン、ドイツ、コスタリカと同じE組に入りました。よりによって、ポット2の中で最も手強いドイツと同居してしまったことは痛恨の極みです。出場した全7大会の中で最も厳しい組み分けになってしまい、正直言って「予選敗退」が頭を過ぎりました。
日本人から見れば、予選突破が困難な「死のグループ」に入ったと思うところですが、世界的に見ればスペインとドイツが順当に予選を突破する「2強2弱」のグループと見られています。

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現在ドイツはランキングを下げていますが、W杯優勝4回を誇るサッカー大国で、2014年ブラジル大会でも優勝しています。先発メンバーの大半が、国内の強豪クラブであるバイエルンミュンヘンの選手なので、クラブチームの様に戦術面の連携もスムーズ。日本が勝つのは至難の業と言えます。

そんな下馬評の中で行われたドイツ戦。日本にとって勝利は難しいですが、それでも引き分け(勝ち点1)以上を目標にした「負けない」戦いか望まれました。
試合開始からすぐの時間帯は前線からのハイプレスが効き、前半8分にはボール奪取からのカウンターで前田選手がゴールネットを揺らします。これはオフサイド判定でノーゴールでしたが、テレビの前で「今日は行けるかも」と思ったのは大きな勘違いでした。
ドイツは左サイドバックのラウムが高い位置を取り、日本の右サイドにいる伊東選手、逆サイドの久保選手が中途半端なポジションを取らされました。思うようにプレスに行けなくなり、ドイツにボールを支配され、左右に振り回されると、ディフェンスラインでも徐々にマークが甘くなっていきます。
何度か決定機を作られながらも凌いでいましたが、前半33分にフリーのラウムにパスが渡り、これをGKの権田選手が倒してしまってPKを取られ、失点。得点こそ0-1でしたが、全く光の見えない試合展開で前半が終わりました。

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朝日新聞11月25日朝刊より

後半に入ると、久保選手を下げてDFの冨安選手が入り、システムを4-2-3-1から3-4-2-1に変更。実際は相手に押し込まれる時は両サイドの酒井選手と長友選手が下がって5バックになる5-2-2-1で、ドイツの左サイドで攻撃の起点になっていたラウムを封じる作戦でした。
さらに後半12分、ワントップの前田選手を浅野選手に、左サイドの長友選手を三笘選手に交代します。三笘選手の本来のポジションはもう1列前で、ここだと守備に追われる時間も多くなりますが、森保監督が反撃の狼煙を上げる選手交代だったと思います。
さらに後半30分、ボランチの田中選手を南野選手に交代。南野選手が2列目に入って鎌田選手がボランチに移ります。もう一人、右サイドの酒井選手を堂安選手に交代。堂安選手が2列目に入って伊東選手が右サイドに下がりました。これで両サイドは、後半開始時は守備に強い長友/酒井だったのが、攻撃力の高い三笘/伊東に変わり、正直言って「前がかり過ぎてドイツのカウンターが怖い」と思いました。

ところが、この怒涛の選手交代とシステムの微妙な変更、そして攻撃力アップにドイツが対応できず、選手交代の直後に三笘選手のドリブル、そして縦パスを南野選手がシュート(系のクロス)、GKノイアーがはじいた所に堂安選手が走り込んで同点ゴールをたたき込みます。
私は家族4人で見ていましたが、その瞬間「やったー」と拳を突き上げてソファーから立ち上がりました。

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朝日新聞11月25日朝刊より

「俺たちが日本にやられるなんて」ドイツは明らかに動揺していました。そんなドイツ選手の心の隙を突いたような追加点が決まります。
自陣で得たFKを板倉選手が縦に蹴ったロングパスに、浅野選手が走り込んで絶妙なトラップ。追ってくるドイツ選手を左手で押えながら、体の大きなGKノイアーにシュートコースをほとんど消されながらも、唯一残された肩口に見事なシュートを決めました。
翌日には「神トラップ」と話題になりましたが、あの大事な場面で、よくぞ生涯最高のトラップを決めたものだと感心しました。小野伸二選手やロナウジーニョなら分かりますが、あの浅野選手が(笑)

W杯の舞台で優勝経験国(ブラジル/ドイツ/イタリア/フランス/アルゼンチン/ウルグアイ/スペイン/イングランド)に勝ったのは史上初。思わず歴史的な勝利に酔ってしまいましたが、まだ初戦が終わっただけなので、残り2戦をどう戦うかが大切です。

岸 未希亜

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