2021年4月11日(日本時間の12日)、男子ゴルフの四大大会の一つ、マスターズ・トーナメント(以下、マスターズ)で松山英樹選手が優勝しました。男子ゴルフの四大メジャー(マスターズ、全米オープン、全英オープン、全米プロ)には、これまで多くの日本人ゴルファーが挑みましたが、1980年全米オープンの青木功、2017年全米オープンの松山英樹が2位になったのが最高順位で、日本人が優勝するのは初めてです。
日本人にとってゴルフは身近なスポーツとは言い難く、お金持ちのスポーツ、サラリーマンの接待ゴルフのイメージも強いですよね。会社で話を振ってみても反応は鈍く、テレビの取り上げ方もそれほど大きくなく、多くの日本人にはピンと来ないようですが、これは歴史的な快挙なのです。
私自身もゴルフ未経験(練習場でボールを打ったことが2度あるだけ)ですが、小学生の時からテニスやゴルフのメジャートーナメントに興味を抱き、各々の四大大会優勝者をノートに記録するほど好きでした。だから30~40年近く前のプロゴルファーについては詳しく、ジャック・二クラス、トム・ワトソン、セベ・バレステロス、グレグ・ノーマン、ニック・ファルドらの顔とプレーはすぐに思い出せます(笑)
開催コースが毎年変わる他のメジャー大会と違い、マスターズは毎年、米国ジョージア州のオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブで開催されます。オーガスタはグリーンが硬く、フェアウェイも起伏が大きくて難しいコースですが、青々とした芝だけでなく、樹木や池やバンカーまでもが写真映えし、ため息が出るほど美しいコースです。
メジャー大会優勝者、前年メジャー上位入賞者、世界ランキング上位者など、厳しい条件をクリアした招待選手しか出場できないため、参加選手数が四大大会で最少なのも特徴です。
松山選手は最終日、2位と4打差の単独首位でスタートし、私が朝6時半頃にテレビを付けた時、12番ホールを終えて2位と5打差の首位でした。「これは!いよいよ日本人チャンピオンの誕生だ」とわくわくしていたら、15番ホールで池に入れてボギーを叩き、同組のシャウフェレ選手に2打差に迫られ、ちょっと不安に・・・
松山選手は2017年シーズン、PGAツアーで2勝を上げ、世界ランキング3位に入るなどキャリア最高成績を収めました。四大大会の成績もマスターズは11位タイ、全米オープンは2位タイ、全英オープンは14位タイ。そして全米プロは、最終日に一時単独首位に立ちながら、スコアを伸ばせず5位タイに沈む無念の結果に。
試合後のインタビューで松山選手は「ここまで来た人はいっぱいいる。ここから勝てる人と、勝てない人の差が出てくると思うんで。勝てる人になりたいなと思います」と泣きはらした目で答えました。私だけでなく、多くの人が「メジャー優勝も近い」と思ったはずです。
ところが、2018~2020年の3年間はメジャーどころかツアー優勝がなく、ニュースで目にする機会も減りました。ですが、世界ランキングは20位前後をキープし、四大大会でも安定した成績を残して、来るべき時を待っていました。初めてコーチを付けて臨んだ今シーズン、マスターズの前までは目立った成績を残していませんでしたが・・・
2年前の夏、渋野日向子選手が全英女子オープンに優勝した時は、初のメジャー大会という以前に初の海外挑戦でいきなり優勝、というアニメのようなシンデレラストーリー。無名選手でノープレッシャーだったとはいえ、呆気にとられるぐらいあっさり優勝したのは驚きであり爽快でしたね。
一方の松山選手は米国を拠点に戦い続け、ライバルからも一目置かれる存在となり、2013年のプロ転向から8年余り、2011年のマスターズでローアマチュア(アマ選手トップ)に輝いてから10年かかって目標にたどり着きました。青木功、中嶋常幸、尾崎将司、伊沢利光、丸山茂樹、片山晋呉といった先輩日本人が何度も跳ね返されてきた高い壁を、遂に超えたのです。
テレビで取り上げられ続けた渋野選手と比べ、松山選手の扱いが小さいのはちょっと残念ですが、彼は必ずメジャー2勝目、3勝目を上げることでしょう。メジャー18勝のジャック・二クラス、15勝のタイガー・ウッズは別格としても、メジャー大会で5勝はしてくれると願っています。
岸 未希亜