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2017.08.31 / よもやま話

九州の夏休み 佐賀篇

旅行に際して妻からの希望は「温泉に入りたい」ということでした。岐阜県に行く時も同様の希望があり、草津温泉、有馬温泉と並ぶ「日本三名泉」の下呂温泉に行きましたし、箱根や伊豆も大好きです。
九州には別府温泉、湯布院温泉、黒川温泉という人気抜群の温泉もありますが、授業で習うことの多い「長崎」に子供たちを連れて行きたかったので、今回は「日本三大美肌の湯」に選ばれている佐賀の嬉野温泉(うれしの温泉)を選びました。

室町時代から言い伝えられている日本三名泉とは異なり、「日本三大美肌の湯」は日本温泉研究所と温泉評論家の藤田聡さんという人が定義したもので、他の2つは島根県仁多郡奥出雲町の斐乃上温泉(ひのかみ温泉)と栃木県さくら市の喜連川温泉(きつれがわ温泉)だそうです。「にっぽんの温泉100選」というランキング(観光経済新聞社)があるのですが、嬉野温泉こそ毎年ランクイン(2016年度は25位)しているものの、他の2つは毎年ランク外です。そうした知名度の低い温泉でありながら、現代の温泉専門家が選ぶ「三大美肌の湯」であることを考えると、皆さんも行ってみたくなりませんか?

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嬉野温泉ではこの旅一番の贅沢をするつもりで、旅館「萬象閣敷島」に泊まり、少しでも長く過ごすために午後3時過ぎにはチェックイン。妻も娘ものんびり寛ぎモードでしたが、自分はウエルカムデザートを食べてシャワーで汗を流すと、長崎の時のように一人で外出しました。目的地は車で40分ぐらいかかる佐賀県鹿島市の肥前浜宿です。

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ここは「浜中町八本木宿」という醸造町と、「浜庄津町浜金屋町」という港町・在郷町が国道と川を挟んで接していて、そのどちらもが重要伝統的建造物群保存地区(以下、重伝建地区)に指定されています。嬉野温泉から近いことは調査済みでしたし、一度に2ヶ所行ったことになる美味しい町並みです(笑)

前者の町並みは、長崎街道多良往還(多良海道)の宿場町であり、塗屋造りの家や土蔵が多く残る醸造町です。佐賀鍋島藩が定めた酒造株仲間制度が明治4年に廃止されると、新しい造り酒屋が増え、最盛期には十数軒を数えたそうです。現在も営業している酒屋がいくつかあり、通称「酒蔵通り」と呼ばれています。昔の写真を見ると、白壁が剥げ落ちた家や電柱・電線がありましたが、2006年の指定から11年が経ち、白壁の補修や電線の地中化が進んで、非常に見応えのある町並みになっていました。

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後者の町並みは、旧多良海道沿いの町並みと、有明海に面した河口の港町(佐賀鍋島藩の外港)としての顔があります。重伝建地区としての範囲は狭いのですが、街道沿いにも、そこから入った小路と水路沿いにも「くど造り」の茅葺き民家が残っているのが特徴です。くど造りとは、茅葺屋根がコの字型になった面白い姿で、佐賀平野では広い範囲に分布しています。

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夏至の直後だったとはいえ、町を歩いたのが17時前後だったので、西日が逆光になったのは残念でした。

町並みを見た後は、予約した食事の時間前に宿に戻り、さっと風呂に入ってから夕食です。個室になっていたので、家族だけでリラックスしながらコース料理を味わいました。

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翌朝は一人6時前に起きて車で外出し、肥前浜宿にも近い嬉野市塩田津の町並みを歩きました。早朝に一人で行動するのは新婚旅行以来かしれません。その時はベネチアのホテルに泊まっていたのですが、ツアーの旅程ではとても町全体を見られないので、薄暗い時間から外に出て一人で歩き回ったのです(笑)

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さて、塩田津も2005年に選定された比較的若い重伝建地区で、改修中の町屋も見られました。ここも長崎街道の宿場町に加え、有明海の干満の差を利用した川港として発展したのですが、塩田川による水害の多発等によって江戸後期から街道が武雄・嬉野方面に迂回し、宿場町としては役目を終えました。しかしその後も川港・商家町としての繁栄は続き、大規模な商家が今日まで残っています。町家の特徴は、入母屋造り妻入り桟瓦葺き土蔵造りの建物で、「居蔵屋(いぐらや)」と呼ばれています。

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商家の裏側には川が流れているのですが、川に向かって敷地が下がっていて、川沿いには広い荷揚げ場があります。多くの物資がここで揚げ降ろしされていたことを、ふと想像しました。

この後、福岡県の大牟田に直行して法事とお墓参りをしました。全員集合とはいきませんでしたが、三世代20人が久しぶりに顔を合わせ、祖父母のことを思いながら、想い出話に花を咲かせました。

岸 未希亜

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