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2017.06.25 / 建築と住まいの話

大人の修学旅行2017前篇

昨年に続き、神奈川エコハウスと共に家づくりをしてくれている職人さんと小旅行をして来ました。昼は歴史的建造物を見て回り、夜は飲み会を行う大人の修学旅行です。
昨年は岐阜県と愛知県に遠征しましたが、今年は千葉県、茨城県という近場が選ばれました。私は藤沢に来る前、東京メトロ東西線沿線に住んでいたため、千葉県でも浦安、船橋といった辺りは馴染みがありますが、上総、下総の文化に触れた機会はほとんどありません。茨城県では古河市、つくば市に縁があった以外、サッカーの試合で水海道市、神栖市を訪れたぐらいで、同じ関東でありながら、両県について意外と知りません。

朝早く出発して、都内から東関東自動車道に入り、成田を通り過ぎて利根川のすぐ手前にある佐原香取ICで高速道路を下り、最初に訪れたのが古い町並みが残る「佐原(さわら)」です。

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佐原は今から21年前の1996年(平成8年)に、43番目の重要伝統的建造物群保存地区(以下、重伝建地区)に選定されました。重伝建地区は毎年その数を増やし、2017年6月現在、全国に114地区もあるのですが、関東には6つしかなく、佐原はその中で最古参の町並みです。

佐原は利根川河口に面した河港問屋町として発展しました。太平洋沿岸を北からやって来る船は、房総半島の南側を大回りするよりも、銚子港を経て佐原に入り、ここで川船に荷を積み替えて、利根川から江戸川を経て江戸に物資を運びました。そのため、利根川に注ぐ小野川に沿って問屋の家や蔵が並び、護岸の一部がところどころ切り取られて、「だし」と呼ばれる荷の積み出し場があります。
大きくうねる運河のような小野川と「だし」のある景観が「佐原」の特徴で、現在、テレビで流れている大同生命のCM(女優の波瑠が出演)は佐原で撮影されています。

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香取神宮の門前に至る香取街道の両側にも古い家が残っていますが、車の往来が激しいため、ここはゆっくり撮影することができません。

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香取街道と小野川が交差する所に「伊能忠敬」にちなんだ「忠敬橋」が架かっています。江戸時代に全国の海岸線を測量し、わが国初の実測日本地図をつくった伊能忠敬は、佐原の伊能家の婿養子になって家業を再興した後に隠居し、50歳を過ぎてから測量の道へ進んだそうです。そんな訳で、町の中にある伊能忠敬旧宅や伊能忠敬記念館も見どころです。
その旧宅の前に、橋の下から水が流れ落ちる「樋橋」がありました。江戸時代から300年近く農業用水を送り続けた大樋の名残で、その音を再現するために30分間隔で水が流れ落ちるのですが、非常に面白い光景でした。

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テレビCMに使われるような町並みが今日まで残っているのも、江戸時代から明治にかけての繁栄が大きなものだったことを物語ります。それにしても観光客が想像以上に多くて驚きました。

次に「東国三社」と呼ばれる、香取神宮、息栖(いきす)神社、鹿島神宮を回りました。
香取神宮、鹿島神宮の創建は非常に古く、神武天皇年代(紀元前7世紀)と伝えられ、平安時代に「神宮」の称号で呼ばれていたのは、伊勢神宮、鹿島神宮、香取神宮の三社だけだそうです。息栖神社は古くから「東国三社」と称されましたが、地理的な関係から鹿島神宮の摂社(本社に付属し、その祭神と縁の深い神を祭った社)とみなされていたそうです。

katorij1.jpg 香取神宮
katorij2.jpg 香取神宮拝殿
ikisuj1.jpg 息栖神社
ikisuj2.jpg 息栖神社拝殿

江戸時代には、関東以北の人々がお伊勢参りの後に東国三社を巡る「下三宮参り」を行う慣習があり、昔から篤い信仰を集めていました。三社の位置を結ぶと直角二等辺三角形になるとか、富士山を意識して建てられているとか、様々な説が語られているようで、「東国三社参り」のバスツアーがあるなど、現在も人気の観光コースみたいです。

kasimaj1.jpg 鹿島神宮

最後に鹿島神宮を訪れたのですが、臨時駐車場も含めてどこも満車でした。駐車場を探して神宮の周りを走るとおびただしい数の路上駐車があり、私たちも仕方なくそこに車を停めて神宮へ向かいました。香取神社と比べると異常とも言える人の多さに「何故?」という疑問が沸きましたが、鳥居を潜り、楼門の前まで来たところで理由が判明しました。

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茨城県牛久市出身の横綱「稀勢の里」がお目見えするとあって、地元のファンが鹿島神宮に押し寄せたのでした。鹿島神宮と香取神宮は、武神を祀る神社として武家から信仰され、現代でも武術方面からの信仰が強いのだそうです。この日に当たったのは運が良いのか悪いのか、15分ほど喧騒の中に身を投じて、奉納土俵入りの雰囲気を味わいました。ほとんど稀勢の里は見えませんでしたが(笑)

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しかし土俵入りは僅か1~2分のことなので、数分後には蜘蛛の子を散らすように人がいなくなり、神社本来の静けさも味わうことができました。(つづく)

岸 未希亜

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