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2015.01.31 / 建築と住まいの話

一年点検で一服

昨年の1月に完成見学会を行った東京都大田区の家が一年点検の時期を迎え、先週その点検に同行して来ました。

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「茶室と音楽室のある家」と名付けたこの家は、文字通りこの2つの部屋の存在が大きいのですが、「狭小地に建つ」という側面も見逃せない要素です。
敷地は三方を家に囲まれた住宅密集地で、唯一開放された南側の道路も幅が狭いために圧迫感があり、採光通風を確保することが命題でした。採光や居心地を考えると、リビングを2階にするべきかとも思いましたが、駐車スペースを必要としなかったので道路面に庭を造ることができ、最終的には1階リビングでも問題ないと判断しました。
そして道路が目の前にあるため、歩行者の視線を遮る細かい竪格子を設けたのですが、これを道路境界の塀としてではなくウッドデッキの先に立てたことにより、庭が道路に対して開放されました。閉鎖感の強い住宅街の中でこの一角だけは、木々が生い茂る隣家とともにオアシスのような印象を与えています。

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さて一年点検ですが、メンテナンス担当の山田君が床下や天井裏の点検をしている間に、私は領収書を見ながら1年分の光熱費を書き写したり、住み心地アンケートを書いてもらいます。
今回はそれに加えて「住まいの教室」で使う写真を撮らせていただきました。前掲の写真で分かるように、東側隣家の庭は緑が溢れているので、先ずは玄関までのアプローチでこれを借景し、リビングからも借景させてもらっています。

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この窓は「室内から隣家の緑を見る窓」として絶好の見本なのです。詳しくは「住まいの教室 第2回(実例:敷地の状況から生み出される住まい)」でお話しします。次回は5月の予定です。

その後は、お施主様の近況を聞いたり、当社で最近建てた家の写真を見てもらったり、専ら雑談をしていましたが、点検を終えた山田君が戻って来ると、お施主様がお茶の支度をしてくれました。
「お茶にしますか?コーヒーがいいですか?」と尋ねられたので、「もちろん、お茶をお願いします」と伝えました。茶道を嗜まれているご主人がお茶を点ててくださるのに、コーヒーを頼むことなどあり得ません(笑)

初めに干菓子(ひがし)が出されました。和三盆を固めた「落雁」は一般的に知られた和菓子ですが、丸いものは初体験です。それから「薄茶(うすちゃ)」をいただきました。一つの茶碗で回し飲みをする「濃茶(こいちゃ)」と違い、一人一人に別々の茶碗で点てられるものを薄茶と言います。2階の茶室で正式にお点前(てまえ)してもらった訳ではありませんが、茶筅(ちゃせん)を振って点てていただいた抹茶は、円やかでとても美味しかったです。

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この黒い茶碗は楽焼(らくやき)で、ろくろを使わず、手とへらだけで形造る「手捏ね(てづくね)」が特徴だそうです。お茶をいただいた後、手に取ってお茶碗を拝見するのが正式な流れですが、作法が難しいのでそこは省略させていただきました(笑)

帰り掛けに外から音楽室の窓を除くと、音楽隊が目に入りました。

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ここは遮音のために二重窓になっている所で、外のサッシと内窓の間が、さながらショーウィンドウのように見えるのです。玄関横にあって訪れる人が自然に視線を落とす場所なので、お施主様の遊び心が大いにくすぐられたのでしょうね。

岸 未希亜

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