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2013.05.13 / 建築と住まいの話

子育て世代のナチュラルモダン

昨夏に完成した横浜の家を紹介します。工期が延びて完成見学会を実施できなかったため、皆様には見ていただく機会がありませんでしたが、今年3月発売の「チルチンびと75号」に掲載された住宅です。

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この住宅の設計は、建て主ご夫妻の素晴らしい企画書から始まりました。「○○おうち計画(○には苗字)」と銘打たれたその企画書には、テーマ、家族の暮らし方(現在の暮らしと将来)、やりたい事・好きな事、部屋・間取りの希望、仕様や設備の希望といった内容が書いてあり、それに加えて自分たちの好きな家(空間)の写真を集めたイメージカット集も用意されていました。

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この企画書を複数の会社に提示し、各社から提案を受けたという話は取材の時に初めてお聞きしましたが、「同じことを話しても、こちらの思いが伝わらないこともある」ことを知ったのだそうです。そんな中で当社の提案は、「自分たちの希望やイメージが具現化されていて、ピカイチだった」とのこと(笑)。
私が思うところ、「こんな家がほしい」という建て主の考えが明確になっていて、しかもそのイメージが神奈川エコハウスの家づくりと矛盾していなければ、その時点で家づくりの成功は約束されたようなものです。

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また、ご夫妻のこだわりは構造や性能面にも及び、OMソーラー等のパッシブシステムも幅広く検討したそうです。ほとんど機械に頼らないエアサイクル工法は、自分たちの考えに一番合っていたうえ、色味、香り、質感など、無垢の木を使った家を指向していたことも当社には追い風でした。

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建て主が考えられたこの家のテーマは「付かず離れずのほどよい距離感を保てる家」でした。「扉一つで他のスペースとはっきり切れてしまうのではなく、家族の距離感を曖昧にしたい。それぞれが同じ部屋にいなくても、みんながどこにいるのか、何となく分かる。ほどよく家族の存在を感じることができる家」というような内容でしたが、これは子育て家族のスタンダードとも呼べる考え方です。それでいて、間仕切りのないオープンすぎる空間ではなく、ほどよい「抜け」のある空間にしたいというのも理想的でした。

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玄関には土間続きの広い玄関収納があります。また、ベンチ代わりのアンティークチェアと木製ドアの質感が、温かみのある雰囲気をつくっています。

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奥様は縫い物やデスクワークが好きということで、玄関脇に家事室を設けました。洗濯機もここに置くことで洗濯動線を短くするとともに、洗面所は木製カウンターを広々と使えるゆとりの空間になりました。

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LDKの一角に4帖半の部屋があります。和室にすることも多いこの場所をあえて板の間のプレイルームにしたのは、泊まり客のほとんどいない家族にとっては現実的な選択です。しかもこの家にはドラムセットや沢山のおもちゃがあって、これらをリビングに溢れさせないためにも必要不可欠でした。リビングにもキッチンにも大きく開放できる建具が入っているため、「部屋」ではなく「場」といえる空間です。
またダイニングの上に吹抜けをつくって、1階と2階を立体的につないでいます。

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2階の寝室・子供室が孤立しないように、吹抜けに面して広いスタディコーナーを設けました。奥に見える水色の壁はアクセントカラーで、粘土を原料にしたクレイペイントという自然塗料を塗っています。

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子供部屋の1つと夫婦の寝室をワンルームにした大きな寝室です。2人の子供部屋を初めはワンルームにしておいて2室に分けるのは定番ですが、夫婦の寝室から子供部屋を切り離すという考え方は、親子で一緒に寝る期間が長い家族にとっては「あり」なのだと思います。

外周部を大壁にしてすっきりと見せながら、内部の柱や梁がしっかり見えた木質感のある室内は、多くの人に好感を持ってもらえるナチュラルモダンな空間です。建て主が好む北欧デザインの照明や家具ともよく馴染んでいて、雑誌で見たような家が完成しました(笑)。

岸 未希亜

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