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2017.06.15 / 建築と住まいの話

大きな庫裡の上棟式

以前にブログで紹介したエアサイクル規格住宅「木-Lism」と、フォトコンテストで最優秀賞を受賞した「ペニンシュラリビングの家(多治見市)」。どちらも神奈川エコハウスの関連法人であるアースデザインオフィスで設計した住宅です。今回は久しぶりに、アースデザインオフィスの活動について報告します。

昨年は神奈川エコハウスの仕事と並行して、2タイプあるエアサイクル規格住宅「木-Lism」の実施設計と、曹洞宗寺院の庫裡(くり:住職家族の住まい兼、檀家の集会所)の実施設計という大きな仕事がありました。他にも、早川工務店の住宅2棟の設計(うち1棟の実施設計は今年)をさせていただき、忙しくも充実した日々を過ごしました。
その中でも庫裡は、2015年3月に打合せを始め、実施設計が完了したのが2016年7月。設計期間はのべ1年4ヶ月です。お寺の行事を避け、敷地を含めた申請等の手続きを経て、今年3月に旧建物を解体。先日、新しい庫裡の上棟式が行われたので、長野へ行って来ました。

新しい庫裡は、約125坪(1階が約92.5坪、2階が約32.5坪)の巨大な建物です。棟上げには大工や他の職人さん等15人が参加し、丸2日かけて行いました。私が訪れたのは式典を行う3日目だったので、すでに建物は建ち上がり、細かい作業や上棟式の準備が行われていました。

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今回は一般住宅ではなく仏教寺院の建物なので、仏式で上棟式を行います。しかも住職だけではなく、近郊のお寺から9人もお坊さんが応援に来て、大掛かりな式典を行うとのこと。大工さんも普段は一般的な住宅を手掛けることが多く、このような大規模な上棟式を行うのは稀だそうで、準備と並行して簡単なリハーサルや台詞の練習もしていました。

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夕方になると檀家さんや近所の方が集まり、工事関係者も列席して上棟式が始まりました。大勢のお坊さんが般若心経を唱える荘厳な雰囲気の中、列席者が焼香する際には、箱に入った幾つもの経典(恐らく「正法眼蔵:しょうほうげんぞう」)をパタパタめくりながら経を唱える様子が壮観でした。

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仏式の式典が終わると、外に出て上棟式特有の儀礼を行いました。初めに行われた「曳綱の儀(ひきつなのぎ)」は、2本の曳き綱で棟木を棟まで上げる儀式です。前述の参列者に加え、関係福祉施設の職員や子供たちも加わり、全員が左右に分かれて綱を持ち、棟梁の掛け声で綱を引きました。

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続いて行われた「槌打の儀(つちうちのぎ)」は、大工が棟木を棟に打ちはめる儀式です。棟梁の下からの合図で、屋根の上に登った大工が木槌を振り下ろしました。

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最後に行われた散餅散銭の儀(さんべいさんせんのぎ)は、いわゆる「餅まき」で、住宅の上棟式でも時々見かけます。足場に設けられたステージから、住職ご夫婦、檀家の役員、棟梁らがお菓子を撒き、参列者が群がる光景はお馴染みです。縁起ものなので、私も一つ拾いました。

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儀礼が終わると、本堂に場所を移して直会(なおらい)が行われ、住職、檀家さん、工事関係者が一緒になってお酒を飲んだり食事をして、改めて上棟のお祝いです。直会を終えて外に出ると、雨がポツポツ降っていました。上棟前日も雨だったそうなので、上棟の期間だけ雨が避けてくれたことになります。これも仏様のご加護ということでしょう。

その後はいつもの流れで、大工さん、職人さんと二次会、三次会へと繰り出しました。今回は、かつて何度も一緒に仕事をしたことのある大工さんと、7年ぶりに会って話ができたのも嬉しい出来事でした。

岸 未希亜

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