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2015.04.08 / 建築と住まいの話

平塚S邸 完成見学会の見どころ

今週末に見学会を開催する「平塚市S邸」の見どころを紹介します。

敷地が広い場合、親世帯が住む既存家屋を残しながら、敷地の一部を切り取る形で子世帯が家を建てるケースがありますが、今回紹介する事例もそれに類する計画です。ただし、主屋と塀に挟まれて家を建てられる場所が限られていたため、総2階建てのシンプルな住宅になりました。

矩形(長方形)の総2階建ては建築費も抑えやすく、木造住宅の基本形と言えますが、私自身はこれまで「矩形の総2階」を設計する機会が殆どありませんでした。
そこで今回は、子育て家族のための「総2階スタンダード」をつくる意気込みでプランを考えました。3.5間×4.5間の外枠はLO-CO HOUSEの31.5坪タイプと同じですので、LO-CO HOUSEを検討中の方にも参考になる間取りだと思います。

1階の1/3は玄関と水回りで、2/3を割り当てたLDKは19帖の明るく開放的な木の空間です。

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建て主はコンセプトハウスのような大きなウッドデッキを望まれ、舞台のような8帖のデッキを造りました。そして室内の床がデッキへと連続するように、ハキダシ窓の一つは全開サッシにしています。
ダイニングには造り付けのベンチソファーを設け、その並びにカウンターデスクを造り、家族共用のPCコーナーにしました。このベンチソファーは建て主の強い希望で実現しましたが、計画前にご案内したオーナー住居で見たものが頭から離れなかったようです(笑)

ダイニングテーブルはカンディハウス社製の「HAKAMAダイニング」です。

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このテーブルは製作中のため、見学会には間に合いませんが、当日はカンディハウスが用意してくれる代わりのテーブルを展示します。照明はルイスポールセン社製のPH2/1です。ポール・ヘニングセンがデザインした照明ではPH5が有名ですが、このPH2/1も乳白ガラスを通した柔らかい灯りが印象的で、一見の価値があります。

「ひとつ屋根の下を感じる家」と題したこの家の魅力は、何と言っても吹抜けを介した1階と2階の一体感に尽きます。

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「吹抜けは勿体ない」「吹抜けがあると寒そう」というマイナスイメージをお持ちの方もおられますが、立体的な空間の広がりは格別ですし、吹抜けがあると木組みを見せやすく、「木組みの家」を感じられるのも利点です。そして1階に床暖房を入れているので、家全体が暖まり、冬でも快適に過ごせます。
また、吹抜けに面して本棚のあるライブラリーを設け、人が溜まれるようにしました。この共用スペースがあることで、実際に2階と1階に分かれていても気配を感じられ、家族が繋がります。
さらにこの家では子供部屋の造りにもひと工夫しました。最初はお決まりのワンルームにしておき、将来は分けられるようにするのですが、単純に2室に分けるのではありません。寝るための部屋(ベッド+収納)2室と勉強スペースに3分割し、この勉強スペースを吹抜けに面したライブラリーと繋ぎます。ひとつ屋根の下で家族が身近に感じられるお住まいですので、子育て中のご家族はぜひ体感してみてください。

洗面室やトイレにもこだわりました。

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大工造りの広々とした洗面台にモザイクタイルを合わせ、既製品では味わえない空間になっています。2つあるトイレは、別々の色味で遊び心を加えました。

外観についても新しい試みをしました。アルミ樹脂複合サッシの防火性能不足が問題になって以来、準防火地域における開口部の制限が家の外観に大きな影響を与えています。すなわちシャッターの問題です。私個人としては、内と外の境界である開口部を両断してしまうシャッターは、その無骨な姿も含めて住宅にそぐわないと思っていますが、準防火地域で網が入っていない透明ガラスを使おうとすると、現在はシャッターサッシを使わざるを得ません。

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「無骨なシャッターをいかに隠すか」もこの家のテーマの一つでしたので、その点にもご注目ください。

岸 未希亜

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