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2014.04.15 / 建築と住まいの話

鎌倉S邸 完成見学会の見どころ

日曜日に開催した「伊勢原K邸」の見学会には5組のお客様が来場されました。
お施主様のソファとハンモックが抜群の存在感を放ち、空っぽの状態では分からない生活のリアリティがあります。古建具のようなアンティークガラスの引戸も入って、お施主様も大満足でした。

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それでは、4月20日に完成見学会を行う「鎌倉S邸」の見どころについて解説します。

お施主様は幾度かの転勤を経て、現在は金沢(石川県)にお住まいですが、終の棲家を求めて鎌倉で土地を探され、縁あって当社で家を建てることになりました。お住まいになるのは、ご夫婦と子供2人の4人家族。子供たちは、すでに横浜で独り暮らしをしている社会人ですが、完成したら鎌倉の家に集結するということで、賑やかな家庭が戻ってきます。

敷地南側の隣地はまだ空き地なのですが、敷地が東西に細長いため、隣に家が建ってしまうと採光、通風が阻害され、住環境が悪くなる恐れがありました。採光や通風を得るためには、自らの家の形や敷地の使い方を工夫することで、隣家の影響を受けにくくする工夫が必要になります。

こうして誕生したのが、この「中庭のある古都の町家」です。

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まず、敷地の南側中央に8帖くらいの小さな庭を設け、それを囲んだ「コの字型」の平面をつくります。さらに「コの字」の東側を平屋建てにすることで、午前を中心に中庭に光が差し込むようにしました。
リビングは北側に配置していますが、中庭と北側の窓からの採光によって十分な明るさが得られています。北側のリビングは適度な落ち着きがあり、かつソファや家具造りのテレビ台も置きやすいので、皆様にもお勧めしたいところです。

中庭の東側で、南に面した部分にはダイニングとキッチンが並びます。

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通常であれば南側に窓を取るところですが、ダイニングの南面はあえて壁にしました。なぜなら南隣地に家が建った場合、窓から隣家が近過ぎて落ち着かないからです。何も建っていない現在の状況を考えると少し勿体ない気もするのですが、窓を大きくしたキッチンと中庭からの採光があるので、明るさの面では問題ないと思います。逆に、家具を置くための壁、絵を飾るための壁、そして間接照明が映えるための壁として、リビング・ダイニングの居心地をよくしてくれるはずです。

中庭を囲むもう一方は和室ですが、これが少々凝っています。

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その一。茶道を嗜まれる奥様のため、お茶室として使用できるように炉を切っています。
その二。床の間の意匠ですが、床框に北山杉磨き丸太の面皮仕上げを採用しました。磨き丸太を削り取った際の杢目が正面に現われ、繊細で美しい景色をつくっています。
その三。和室天井の伝統的な形式である、羽重ね張りの竿縁天井を採用しました。薄い天井板を重ねるので施工に手間がかかりますが、仕上がりはとても綺麗です。
その四。中庭側の障子を雪見障子にして、足下の庭だけをフォーカスするようにしました。
その五。押入の上にルームエアコンを設置するのですが、壁を凹ませて全面に格子戸を入れるので、エアコンが目立ちません。

そんな訳で、ぜひじっくり見てほしい和室です。

その他の見どころとしては、遊び心のあるアクセントカラーが挙げられます。

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造作洗面台はDURAVIT社製の洗面器を埋め込んだ青系のタイルカウンターが鮮やかで、清潔感を感じます。1Fトイレで手洗器の上と背面収納棚に貼ったガラスモザイクタイルも綺麗ですし、2Fトイレでは背面の壁一面を鮮やかなクロスで彩りました。
また、下足箱の引戸には栗梅色の襖、2階ホールに面した押入には薄紫色の襖を採用しました。「建具は木造空間の華」と言われますが、まさに木と漆喰の住まいに華やかさが加わり、空間に艶(ツヤ)が出ると思います。

現在は外構工事の真っ最中で、見学会の時には一部を残して外構も完成している予定です。ただ、主役の中庭については住んでみてから詳細を決めることになり、今回は飛び石や水鉢のある和の中庭をお見せすることができません。ぜひ想像力を膨らませてご参加ください(笑)

岸 未希亜

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