先日、横浜市鶴見区のお宅に1年点検に行って来ました。
こちらのお施主様とは、私が神奈川エコハウスに入って間もない頃(2009年10月)に出会ったのですが、後に契約まで至る案件の中では最初に基本設計に取りかかった住宅ということで、思い出深い仕事の一つです。
記憶に残る理由は他にもあります。施主であるご夫婦が初回の打合せに持って来られた「要望ファイル」が印象的でした。雑誌を切り抜いたイメージカットからは、柱の見えない「大壁」の白い空間、床や窓枠は焦げ茶色に塗装してアンティーク調にまとめたい、という明確な希望が伝わってきました。
白い壁にアンティークブラウンが映えるインテリア
さらにご夫婦の夢は、陶芸のためのアトリエと、陶器とカフェの店を併設したいというものでした。残念ながら、諸般の事情により全ては実現できませんでしたが、当初案では土留めを兼ねた地下(一段下がった道路面)にアトリエ&カフェを計画し、2度目の提案でも可能性を模索しました。
それでも玄関から土間でつながるスペースに陶芸の工房を確保し、電気窯が設置してあります。引越しから1年が経過して、漸く作品づくりの時間が取れるようになったそうです。
またキッチン廻りは、食器や家電類を大きな3枚の引戸で隠し、冷蔵庫やレンジフードも壁で隠すことによって生活感をなくしています。そのキッチンとダイニングを横並びにつなげて、キッチン背面には格子状の棚を設けました。ここには陶芸作家の手によるコーヒーカップが陳列し、カフェのような雰囲気を漂わせています。

竣工当時は、このリビング・ダイニング南面の大きな窓の外にはウッドデッキがあるだけで、やや殺風景な状態でしたが、お施主様の手によるウッドフェンスが立ち、植栽が施され、雰囲気のある椅子とテーブルが置かれていたので、オープンテラスのように見えて感動しました。

お施主様の創意工夫はそれだけに止まらず、玄関脇の細い通路を「露地庭」に一変させました。
建物と隣地との間に余裕がなく、普通なら通り抜けるだけの通路ですが、玄関ポーチへ昇って来るとよく見える場所でもあるので、お施主様の美意識が許さなかったようです。表のガーデンテラスとは異なり、和の雰囲気も感じさせる見事なお庭でした。
本物の家の美しさは、竣工時がピークではありません。
工業製品であれば完成時が一番良い状態ですが、自然素材で造られている住宅は経年変化によって味わいが増し、手を入れることによってより良くなっていきます。
フェンスや庭を自作できる人はなかなかいませんが、自分の家に手をかけて大切に使っていただくことが、間違いなく家にとっても幸せなのです。
岸 未希亜

