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2012.05.22 / 建築と住まいの話

森の中にたたずむ御殿場の家

少し前になりますが、昨秋に完成した御殿場の家を紹介します。

以前、「お知らせ」でお伝えしましたように、3月発売の「チルチンびと71号」に掲載された住宅です。

当社が初めて施工する地域であり、完成見学会も実施しなかったので、なかなか皆様には紹介する機会がありませんでした。

なぜ御殿場で当社が家を建てることになったのか、そのお話から始めましょう。

ともに岩手県ご出身のお施主様夫妻には、故郷にエアサイクルグループの加盟工務店にお勤めのお兄様がおられ、当初はそのお兄様に設計してもらうつもりで相談をしていたそうです。

一方、静岡県内の住宅会社や工務店を幾つか見て回っても、なかなかこれという会社が見つからずに困っていたところ、エアサイクルの豊富な実績を有する当社が候補に浮上し、当社のコンセプトハウスや完成見学会を見るために、御殿場から藤沢や鎌倉に何度も足を運んでいただきました。さらに前述のお兄様が、偶然にも建築雑誌に連載を持っていた頃の私の名前を覚えていてくださり、設計から全てを任せていただきました。

それでは、この家の3つのテーマを紹介します。

一つ目は、東側の眺望や外部空間との連続性を求めた「東にひらく家」です。

敷地は60坪の宅地と隣り合う130坪の山林地からなり、東と北には森が広がっています。宅地東側の山林地は樹木も伐採済みでプライベートコートになっており、その背後に森が迫っている魅力的な立地でした。
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そこで大きな窓から庭と森を眺められるように、リビングとダイニングを東向きに南北に並べました。LDの南に取り付く和室も東面にハキダシ窓があり、同じように森の木々を望みます。ダイニングと和室は室内だけでなくデッキを経由しても行き来することができ、デッキはさながら空の下のリビングです。
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また夫婦の寝室を畳敷きにしたいということもあり、2階では日当たりと眺望に恵まれた南東角に和室を設けました。ベッドルームと違って畳敷きは、日中の居場所としてゴロゴロするのにも適しています。
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二つ目は、暮らしやすさを「かたち」にした間取りです。

ここで暮らすのは、ご夫婦と未就園児の男の子という3人家族。お施主様は3人の子供を育てていきたいという希望があり、将来は3室に分割できるキッズスペースを2階に確保しました。
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当面は北側を2室の子供部屋、南側をスタディスペースに分けますが、子供部屋は2枚の戸を引込むとスタディスペースや階段・吹抜けと一体になり、1階LDKともつながる大空間が広がります。

1階は、リビング、ダイニング、和室がキッチンを取り囲む形になっていて、キッチンに立てば家族がどこにいても様子が分かるので安心です。
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造り付けのベンチを置くために、キッチンと対面する位置にはリビングを配しました。ダイニングテーブルには求心性があるので、ダイニングは必ずしもキッチンの真横になくても大丈夫ですが、リビングはソファを置くにしても壁を背にしたような落ち着いた居場所が必要になります。この家のリビング・ダイニングはたいへん居心地のよい空間になりました。

またキッチンの西側に水回りをまとめたので、LDから距離を置き、かつキッチンからの動線が短い点はたいへん便利です。御殿場は湿度が高いため、洗面所の隣りにサンルーム(室内物干場)を設けたのも特徴です。
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三つ目は、御殿場の気候風土に対応した家づくりです。

御殿場は雨や霧の発生が多く、梅雨時は特に湿度が高くなります。
降雨量の多い日本の家の知恵として屋根の軒は深くしていますが、多湿に対してはエアサイクル工法が効果的です。
室内の見える所は対応の仕方もありますが、躯体内部に湿気がたまると内部結露を生じてしまいますので、床、壁、天井を空気が流れるエアサイクル工法の効果が存分に発揮されるものと思います。

またこの地は夏涼しく、冬寒いという高原の気候特性があり、冬の暖房が重要になります。今回、北国の建物でよく見られるパネルヒーター(放射暖房システム)を各室に設置しました。ここまでご覧いただいた写真で、窓の下や横に設置されている白いパネルがそれです。
輻射熱による全館暖房によって、冬でも裸足で過ごせるような心地よい暖かさを実現しています。
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周囲の景色を取り込み、地域の気候風土に合わせたこの家が、子供の成長とともに変化するご家族の暮らしを末永く見守り続けてくれますように。
周囲に広がる深い森を見ていると、その想いが一層強くなりました。

岸 未希亜

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