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2012.04.11 / 建築と住まいの話

「横浜市M邸」完成見学会の見どころ

今週末、4月15日に完成見学会を行う金沢区の「横浜M邸」について解説します。

完成した建物がある住宅地は、整然とした敷地割りで敷地一つ一つが広い上に塀やフェンスが少なく、どの家も道路に面した植栽が充実しています。
このような非常に恵まれた住環境下での建て替えということで、
新しい家にも相応の風格が求められると感じました。

この住宅を設計するに当たって大きなポイントになったのは、設計前のヒアリングで施主から「和風でなく洋風の家」を望まれたことです。

基本的に私は、日本の家に「和風」と「洋風」の区別はないと考えているので、この時も施主の真意を確かめた上で、一般的にイメージされる「和風の家」にならないようにと思考を巡らせました。

oyane3.JPG

施主からの要望は、家族3人が暮らす家としての基本的な条件のほかに、
幾つか特別なものがありました。

一つはご主人の趣味に関することで、オートバイのメンテナンスができるガレージがほしいという希望と、望遠鏡で星を見るのが好きなので広いバルコニーがほしいということです。

ガレージを設けるとすれば道路の接している北側ですが、風致地区の厳しい壁面後退規制があって、建物の下に組み込むしかありませんでした。
そこで敷地と道路の高低差を利用し、階段と絡めた小さなスキップフロアを設けてその下をガレージとしました。ガレージには家の中からも階段で下りられます。

また、奥様が続けられているステンドグラス製作は、趣味以上のライフワークになっていましたので、もう一つの要望は、ステンドグラスのアトリエを用意することと、家の各所に奥様の作品を散りばめることでした。

前述のスキップフロアは家族のスペース(1階)と個人のスペース(2階)の中間にあり、北側採光のためアトリエとして最適でした。

ステンドグラスを嵌め込むため、玄関ドアは4つの小窓を設けたオリジナルの木製ドアです。玄関と畳リビングの間仕切り壁に入れたステンドグラスは、家族や来客を優しく迎えます。
他にも、キッチンや階段の踊り場、寝室の窓の前にもステンドグラスを立てられるようにしています。

oyane2.jpg

この家のタイトルは「ステンドグラスが彩る大屋根の家」です。

屋根は外観の印象を決めるので、妻面(三角形の面)を大きく見せる形で勾配も緩くし、スキップフロアに向かって屋根を葺き下ろしました。
非常に雄大な大屋根が形成され、「和風」とは少し違った外観となっています。

oyane1.JPG

また室内でも、真壁の家でありながら柱の見え過ぎないすっきりとした空間をつくり、濃色のアッシュ材のフローリングを張り、室内の引戸やドアの素材を広葉樹のタモにしたことで、施主の考えるイメージに適う「日本の家」が完成しました。

岸 未希亜

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