ブログ

2023.02.07 / 建築と住まいの話

京都研修前編(聴竹居)

皆さんは「聴竹居(ちょうちくきょ)」と呼ばれる住宅のことをご存知でしょうか?
聴竹居は、藤井厚二(1888~1938)という建築家が設計した、日本で最初の環境共生住宅と言われています。「環境共生住宅の原点」を見ることは「エアサイクルの家」にとっても大いに参考になるということで、滋賀県立大学環境建築デザイン学科の金子准教授に案内役になっていただき、昨年10月にエアサイクル会員向けのツアーが企画されました。私も大学の授業等で聴竹居のことは知っていましたが、建物を実際に見たことが無かったので、仕事の合間を縫って行って来ました。

choutik1.jpg
聴竹居が建っているのは、京都府乙訓郡大山崎町という京都府と大阪府の府境にあたる場所で、近くには石清水八幡宮やサントリー山崎蒸留所があります。当日はJR京都線の山崎駅に9時50分集合だったので、5時15分に起きて、小田原から新幹線に乗って現地に向かいました。
山崎駅は周りに何も無い小さな駅ですが、駅の真ん前に千利休の作と伝えられる国宝の茶室「待庵」があります。1ヶ月前に往復ハガキで申し込む必要がるので、ついでに見るという訳にはいきません。私は大学生の時に見学したことがありますが、ここまで来て素通りするのはやはり残念です(笑)

myokian.jpg
藤井厚二は東京帝国大学(現東京大学)の建築学科を卒業して竹中工務店に入社。その後、京都帝国大学(現京都大学)の教官になって、建築設備から環境工学に関する研究を進めることになり、環境建築家とも言えるような存在になりました。
藤井は見晴らしの良い大山崎の高台に1万2千坪もの土地(山林)を購入し、自らが理論化した環境工学の知見を盛り込んだ実験住宅を次々に4棟も建てました(他に神戸で第1号住宅を建築)。その最後に建てられた5回目の実験住宅が「聴竹居」になります。

choutik2.jpg
まずは方位についての検証です。
第1回住宅では定石通り南北方向に軸線を取り、第2回はわずかに軸線を西に向け、第3回と第4回では西に45度も傾けました(正面を南東に向けて西日を避ける)。そして聴竹居では軸線を30度西に傾けているので、最終的にわずかに西日が当たる角度をベストと判断したようです。
ただし広い敷地でない限り、家を自由な向きに建てるのは難しいので、一般的には「方位を考えた敷地選び」が必要になる訳です。

choutik3.jpg
夏の暑さをどうしのぐか、という検証もされています。
家庭用のエアコンがない時代なので、様々な工夫が見られました。その一つは、天井面に引戸のようなものがあって、天井付近にたまる熱い空気を天井裏に逃がし、小屋の妻壁から排気する仕組みです。
併せて外気を取り入れる仕組みもあります。一つは地窓を開放することで、涼しい新鮮な空気を取り入れます。もう一つは地中に埋めた給気管から家の中に外気を入れる仕組みです。京都や大阪は西風が多いため、西に開口部を設ける必要がありますが、緑陰があったとしても、西側だとそれほど冷たい空気は期待できません。そこで家の西側にある崖の途中に空気取り入れ口を設け、地中のパイプ(土管)を通る間に冷やされて、床下から室内に流れ込むというものです。これも立地条件に恵まれているからこそではありますね。

choutik4.jpg

聴竹居で配布されたパンフレットより

さらに藤井は、建物内に床下と天井裏をつなぐ通気筒をつくり、床下の比較的冷たい空気を風の力で天井裏へ引き上げ、天井裏の温度を下げることも考えました。そのために床下の通風を良くし、屋根は切妻にして妻面から排気する工夫がされています。この仕組みは、正にエアサイクル工法に通じるもので、エアコンなどの設備機器に頼らず、自然のエネルギーを生かす家づくりを目の当たりにしました。
冬は縁側(サンルーム)で日光を受け、温まった空気を家全体に運ぶということで、廊下をなくし、居間を中心にしたワンルームに近い空間になっています。ただ、断熱材が入っていないので、冬はやはり寒かったようです。
断熱と通気を併せもつエアサイクル工法は、そうした欠点が改善されているので、環境共生住宅の進化形であることを再確認することができました。

室内も撮影したのですが、SNS等で使わないように言われたため、詳細を写真で伝えられず・・・
(後編に続く)

岸 未希亜

.
.
.

-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-
創業から50年の実績。自然素材を使った健康住宅で地域に根ざす工務店
藤沢 鎌倉 茅ヶ崎 湘南 神奈川
新築もリノベーションも、注文住宅の木の家は神奈川エコハウスにご相談ください
木造住宅/和風住宅/和モダン/自然派健康住宅/エアサイクル住宅

Category
お知らせ
建築と住まいの話
よもやま話
ロコハウス
書籍・メディア掲載
Archeives