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2022.09.16 / よもやま話

父と娘の古都巡り2

今回は2日目のレポートです。
ホテルのチェックイン時に朝食の時間を聞かれますが、娘が「ゆっくり寝たい」と言って朝食を8時半にしたので、私は朝6時に起きて「ならまち(奈良町)」へ繰り出しました。朝食前に一人で散策するのは、大工さんたちと旅行した時の高山でも、新婚旅行の時にヴェネチアでも経験済みです(笑)

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近鉄奈良駅からアーケード街を南へ進み、三条通りを超えてさらに南下すると、昔ながらの町並みが残るエリアが現れます。最初に目にしたのは「古梅園」という木看板を掲げた重厚な町屋です。早朝で雨戸が閉まっていたため、何の店か分かりませんでしたが、後で調べたら、書道の墨を売る老舗(創業1577年)でした。

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初めの方は、新しい建物の間に点々と古い町屋が残っている感じでしたが、さらに南下すると点が線になって「町並み」になってきました。軒裏を漆喰で塗り回した塗屋造りの家もあれば、破風や軒裏に板を使った家もあります。2階は漆喰塗りの白壁、1階正面は木製の竪格子が並ぶため、個々の家の細部のデザインは異なりますが、町並みとしての統一感があって好ましい雰囲気です。

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喫茶店やイタリアンレストランに改修された町屋もあります。来る前はそれほど「ならまち」に期待していなかったのですが、そこ彼処に良い雰囲気が感じられ、気が付くと夢中になってカメラを構えていました(笑)

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初めは人通りもほとんど無かったのですが、次第に通勤する人とすれ違うようになり、さらに家の前には各家庭のゴミが出され始めたため、写真を撮るにはイマイチの状況に・・・(笑)

興福寺の南に奈良ホテルがあり、その南に旧大乗院庭園があります。その旧大乗院庭園を北に見る町角に「名称大乗院庭園文化館」があります。

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前日に見た「葛城の道歴史文化館」と同じく、日本ナショナルトラストのヘリテイジセンターとして故・吉田桂二氏が設計した建物です。1989年の竣工なので30年以上経過していますが、古い建物にありがちなくたびれた姿はなく、逆に「新しい建物」という違和感もなく、「ならまち」に溶け込んでいます。周囲の環境に調和するデザインは時代を超える、ということを再認識しました。

1時間半以上歩き回って汗をびっしょりかいたので、ホテルに戻ってシャワーを浴びてから娘と朝ご飯を食べました。

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東大寺に向かう途中、まずは興福寺や奈良公園の鹿が迎えてくれます。鹿がいることは知っていた娘も、鹿の多さに驚くとともに、鹿の糞が歩道に大量にあるのを見て「引いて」いました。

東大寺は728年を起源とし、聖武天皇によって整備された華厳宗の大本山です。奈良のシンボルである大仏(盧舎那仏坐像)を本尊とするため、誰もが一度は訪れたことがあるのではないでしょうか。
参道を歩いていくと、最初に現れるもの凄く大きな門が国宝の「南大門」です。

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南大門は、鎌倉時代の仏師・運慶らによって製作された金剛力士像(阿形・吽形)があることで知られています。門も大きいのですが、高さ8.4mの金剛力士像にも圧倒されます。
東大寺は平安時代末期の源平争乱の際、平重衡(たいらのしげひら)による南都焼き討ちで伽藍のほとんどを焼失しました。後白河法皇の命を受けた重源は、当時の中国で学んだ「大仏様」という建築様式で東大寺の再建に着手しました。

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「大仏様」というのは、斗供(ときょう)という組物の上に肘木(ひじき)を置くのではなく、肘木を柱に直接差し込む「差し肘木」という手法が特徴です。また、柱と梁の断面が四角ではなく丸い上に、全体が太くがっちりとした部材で構成されています。見た目には非常に力強い様式ですが、地震国の日本では構造的に脆弱だったため、現存している「大仏様」の建築は少なく、東大寺南大門は非常に貴重な遺構です。
南大門の先には、盧舎那仏坐像を安置する金堂(大仏殿)があります。ともに国宝です。

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鎌倉時代に再建された建物は、戦国時代に松永久秀の軍勢によって再び焼き払われてしまい、現在の大仏殿は江戸時代中期の1709年に完成した三代目になります。正面幅が創建時の3分の2に縮められ、間口57メートル、奥行き50メートル、高さ48メートルになりましたが、それでも世界最大級の木造建築です。
建物に足を踏み入れると、黒々とした銅造の大仏が鎮座しています。高さ15メートル、顔の長さ5メートル、重さは推定250トンだそうです。歴史もスケールも鎌倉大仏を凌ぎますが、お顔は鎌倉大仏の方がハンサムだと思います。個人の感想ですが。

東側の山の上にある法華堂(三月堂)と二月堂も国宝です。

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法華堂は仏を安置する正堂(奈良時代/寄棟造り)に、礼拝のための礼堂(鎌倉時代/入母屋造り)を付けて1棟にしたもので、現存する東大寺最古の建物です。

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二月堂は奈良に春の訪れを告げる「お水取り」の行事で有名です。天平時代の752年に始まって以来、一度も途切れずに続いているそうですが、クライマックスの「大松明」は一度見てみたいものですね。

大仏殿の裏手には、校倉造り(あぜくらづくり)で有名な正倉院があります。

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校倉造りは、校木(あぜぎ)と呼ばれる断面が五角形の木材を井桁に組んで積み上げた外壁が特徴で、伝統的な倉庫の建築様式です。正倉院は古代の高床式住居の形式を残した宝物庫で、1997年に国宝に指定されました。東大寺に来たのは3度目ですが、日本史の教科書に必ず出てくる正倉院はこれまで見たことがなかったので、有名人に会えたような感じでただ単純に嬉しかったです。

春日大社か興福寺も回りたかったのですが、「スタバに行きたい」と娘が言うので、興福寺の北、奈良公園バスターミナルの一角にあるスターバックスコーヒーの店舗へ。

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この日は8/4で、娘は8/3に発売されたばかりの新商品「山梨ぶどうホワイトチョコレートクリームフラペチーノ」を飲みたかったようです。中学生のくせに生意気な・・・(笑)

東大寺境内を歩き回ったので再び汗びっしょり。ホテルに戻って本日2度目のシャワーを浴びてから、近鉄奈良線で大阪に向かいました。訪れたのは、天下一の名城とも言われる大坂城(大阪城)です。

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大坂城展望台からの眺め

豊臣秀吉が築城した大坂城は大坂夏の陣(1615年)で落城し、徳川秀忠によって再築された二代目の天守も、1665年の落雷によって焼失しました。現在の天守は1931年(昭和6年)に復興された鉄筋コンクリート造の模擬天守です。8階建ての歴史博物館になっていてエレベーターも設置されているため、内部は城という感じがしません。

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大坂城の一番の見どころは、日本一の規模を誇る石垣と、石垣に用いられた巨石です。石垣も秀吉時代のものではなく、徳川幕府が全国の大名にお手伝い普請を命じて築城した遺構なのですが、わが国で築城技術が最も発達した時代の工事だったので、巨石の使用、石垣の塁壁の高さ、石垣の出隅を形作る算木積みの技術などを誇り、日本一の石垣ということです。中でもナンバーワンの巨石は、本丸南側の入口である桜門を潜った突き当りに据えられた「蛸石」です。

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大きさは36畳敷きに相当し、表面を平らにして切り出されているため、一見するとコンクリート壁のようにも見えます。他にもある巨石の数々を、船と人力しかない時代に運搬したことは驚異的です。

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お城好きを自認する私ですが、興味の対象はどうしても13ヶ所の現存天守に偏っているため、大坂城は祖母と来た小学生以来、一度も訪れていませんでした。しかし、大人になってから司馬遼太郎の「城塞」や池波正太郎の「真田太平記」を読むようになり、遅ればせながら「大阪冬の陣・夏の陣」の舞台である大坂城への関心も沸いてきました。娘が見たいというので約40年ぶりに来た訳ですが、歴史の舞台である大坂城を体感できたのはとても良かったです。

次に訪れたのは通天閣。大阪市浪速区の新世界中心部に建つ展望塔です。祖母や伯父が住んでいる大阪には子供の頃から何度も来ていますが、通天閣に来たことはありません。娘が行きたいと言うので渋々やって来たのですが、近くにある「ビリケンさん」も含め、この大阪のシンボルを一度は見ておかないといけませんね。

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現在のものは1956年に完成した二代目で、設計は東京タワーや名古屋テレビ塔を設計した構造家の故・内藤多仲(早稲田大学教授)です。1990年代に大規模な改修工事を行った後、2015年には世界初の展望塔免振化工事も実施され、安全性の高い施設になっています。

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特別野外展望台から見る「あべのハルカス」

通常の展望台(4,5F)まで上がるチケットと、特別野外展望台(RF)に行くチケットがあります。娘にせがまれて特別野外展望台「天望パラダイス」まで行きましたが、階段で上がった所は地上94.5メートルの屋上で吹き曝し。生身の体に風が当たるので、手摺があっても怖さを感じました。

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通天閣公式HPよりイメージパース

さらに跳ね出し展望台「TIP THE TSUTENKAKU」というものがあり、完全に通天閣の外に飛び出していて悪趣味です(笑)

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みんな順番に記念撮影するのですが、空中にいるような不安な感じで、流石にこれはムズムズしました。高所恐怖症だったら絶対に無理ですね。ロケットに乗って宇宙に飛び出すかのようなアナウンスと演出がされたエレベーターも含めて、実に大阪的な演出で面白かったです。(つづく)

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岸 未希亜

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