昨年から今年にかけて建築した中で、構造・完成見学会を開催せず、現場日誌も公開していなかった住宅があります。つまり「このような家ができましたよ」と、皆様にお伝えする機会がありませんでした。
しかし完成時に、「良い仕事ができたことを当社のファンに知ってもらいたい」気持ちを建て主とも共有できたので、先ずはブログで紹介します。
この住宅の計画は2018年の4月に始まりました。当時は、まだ候補の土地を購入できるか分からない状況でしたが、敷地を見てラフプランと概算見積りを作成。しばらく時間が空きましたが、2019年の1月になって、土地の取得へ向けて具体的に動き出したため、改めてのプラン作成と打合せを重ねました。
敷地は眼下に大海原を望む山の斜面。敷地の5分の2にあたる北側の100坪は、公道に接していて平坦ですが、5分の3にあたる150坪は傾斜地です。平らな100坪にも家は建てられますが、建て主は「この斜面に建てる」というイメージをお持ちで、敷地に立った私も「この斜面に建てるべき」だと思いました。
土地の平らな部分を建物の2階レベルに設定して、斜面に馴染ませる計画ですが、当初は1階を少し地面に埋める形で鉄筋コンクリート造にする考えもありました。しかし湿気や居住性の欠点を考慮し、斜面から少し離す形で基礎を高く造っての木造2階建てに変更。建て主が当初から持っていたイメージを素直にプランに落とし込んだ上で、景色を望む二重回廊の提案が建て主の心を捉えました(笑)
傾斜地に建てるので、平面形状は総2階に近いシンプルな形です。しかし床面積は55坪ながら、1階デッキと2階ベランダの外に柱を立て、ひと回り大きな屋根を架けているので、規模は約74坪とも言えます。
建て主は、「地場の素材を使うこと、地元の職人たちと造ること」に共感されており、構造材にはもちろん神奈川県産材を使いましたが、今回はプレカットではなく大工の手刻みです。2階の大空間に曲がり梁を4本使う計画にしたため、山梨県の材木屋から地松の曲がり梁を入れてもらい、業務提携先の厚木の製材所で製材しました。非常に大きな建物なので、「刻み」だけでも3ヶ月以上かかっています。
30~40坪の家なら1日で終わる建て前(上棟)も、1日では終わりません。1階に立つ柱の数も多く、初日は小屋組みまで組み上げて終了。
寄棟屋根なので隅木の納まり等もあって、2日目に屋根の野地まで出来上がり、3日目に二重垂木や断熱材、ルーフィングまでが完了しました。
キッチン、洗面台、本棚などの造り付け収納は、県内の家具職人(無垢の会)に手分けしてもらって造りました。中でもキッチンは二列型でボリュームも大きく、この家の重要なアイテムの一つです。
全ての部屋から海が見えるのですが、「浴槽でお湯につかりながら眺望を楽しみたい」という要望は重要でした。ユニットバスだと窓の位置が不自由なため、浴槽の高さに窓を設けたタイル貼りの浴室にしています。
また、建て主の交友関係から、陶器の洗面ボウルと「組子細工」を採用することになりました。「組子細工」とは、障子・欄間・襖などに小さな木材を組み合わせた細工を施した飾りのことです。
洗面ボウルは藍色の絵付けも含めて、有田焼の作家に製作してもらいました。うさぎと青波のデザインが愛らしく、黒の洗面台にも合っています。
組子欄間は「青海波」、組子障子は「桐麻」のデザインで、島根県の吉原木工所に製作してもらいました。伝統的な意匠ながら、シンプルで美しい組子です。
完成した住宅の姿は後篇でお届けします。
岸 未希亜
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