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2017.08.28 / よもやま話

九州の夏休み 佐世保・有田篇

この日は、長崎市から車で1時間半以上かかる佐世保市のハウステンボスへ行きました。ハウステンボスは1992年に開園し、経営が破たんした後、現在はエイチ・アイ・エスの子会社となって復活したリゾート施設です。開園当時、ここまで大規模にオランダの町や風景を再現するテーマパークに違和感を覚えた記憶はありますが、来るのは初めてでした。実際に足を踏み入れてみると、風車や運河の風景、本物そっくりな町並みは見事と言えば見事で、ディズニーリゾート以上に建築費がかかっていると思いました。

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様々な遊技施設やアトラクションもあるのですが、暑い時期だったので、私たち家族の目的は水遊びです。長女は海上ウォーターパーク(エアマット等で海の上につくったアスレチック:小学4年生以上)で遊びたいというので私が同伴し、次女は妻と一緒に、年齢制限のない水の王国・大プールで遊びました。

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海上ウォーターパークはテーマパークゾーンから外れたヨットハーバーの一角にあり、水深も深いのでライフジャケットを着ます。気を付けていても何度か海に落ちてしまい、しょっぱいやら目が痛いやらで散々でした。

翌日は佐世保港を左に見ながら九十九島(くじゅうくしま)へ。佐世保港は明治22年の開港以来、米海軍が駐留しているため、港には灰色の軍艦が停泊し、横須賀港の雰囲気に近い感じでした。ところが半島を挟んだ反対側は全くの別世界です。九十九島は大小208もの島々が点在する多島群の総称で、「九十九」は数えきれないほど沢山の島という意味です。空も海も青く、ため息の出る絶景でした。

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団体旅行の中国人グループがやって来るのと入れ替わりだったので、絶景をバックに家族写真をゆっくり撮ることができてラッキーでした。踊る授業シリーズ「本能寺の変」で有名なエグスプロージョンはご存知ですか?彼らの動画「地理授業編・九十九島」があるので、興味のある人はどうぞ。

次は長崎県の平戸に行こうとも思ったのですが、時間がかかり過ぎるので断念し、佐世保からも近い佐賀県の有田(ありた)に行きました。約400年前、朝鮮人の陶工によって磁器の原料となる陶石が発見された有田は、日本の磁器発祥の地、日本を代表する磁器の産地として知られています。
町の中にある独立支援工房「赤絵座」で絵付け体験ができるということで、妻子を工房に残して、私は重要伝統的建造物群保存地区に選定されている有田の内山地区を歩きました。

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有田には一度来たことがあったのですが、改めて町並みを見て感心することがありました。それは昭和初期に国道を拡張した際、主屋を後退させたり建替えたりして、姿を変貌させながらも有田らしい町並みを残していることです。他所では国道がバイパスになることで、旧街道が保存しやすくなっている例が多いのですが、ここが磁器の町としていつまでも現役である証と言えます。バス停の地図やトイレの便器も有田焼でした。

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裏の小路に見られるトンバイ塀も特徴です。トンバイ(登り窯を築くために用いた耐火レンガ)の廃材や使い捨ての窯道具を赤土で固めた塀で、焼き物の町である有田らしい景観です。

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ここで有田焼、伊万里焼について簡単に解説します。有田で作られた磁器は伊万里港から積み出ししていたため、有田に限らず肥前(佐賀県・長崎県)の磁器は全て「伊万里」と呼ばれていました。そして陸上輸送になった明治以降、「有田焼」「伊万里焼」と実際の産地で区別されるようになったそうです。

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1650年頃までに作られた「初期伊万里」は、素地が厚く染付(そめつけ)のみの素朴な磁器ですが、1640年代から色絵(いろえ)が始まり、「柿右衛門様式」「金襴手様式」などの装飾的な磁器が生まれました。さらに、中国の政変によってヨーロッパの王国貴族の間で人気だった中国の磁器(景徳鎮)が輸入できない事態となり、オランダ東インド会社は有田で作られた「伊万里」を海外へ輸出しました。有田では国内向けの磁器とは別に、西洋の顧客に向けた磁器も生産され、ヨーロッパで大人気となったそうです。
また、佐賀鍋島藩は「伊万里」の製造技法が流出しないよう、窯場を限定し、代官所を設けて人の出入りを監視しました。さらに将軍家・諸大名への贈答品など、採算を度外視した特別品を製作する藩の御用窯は、情報漏洩を防ぐために有田から山間の大川内山(おおかわちやま)に移して生産。これを「鍋島様式」とか「鍋島焼」と呼びます。
これら江戸期を中心に生産された歴史的、骨董的価値の高い作品を「古伊万里」と呼び、日本だけでなく海外でも高く評価されているのです。私たち庶民には縁の薄い話ですが(笑) つづく

岸 未希亜

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