ブログ

2016.08.16 / 建築と住まいの話

藤沢N邸 完成見学会の見どころ

今週末に見学会を開催する「藤沢市N邸」の見どころを紹介します。
最大の特徴は、一つの敷地に同時に2棟の家を建てていることです。法的には一つの敷地に1棟しか建てられないので、正確に言えば敷地を半分に分けているのですが、境界にブロック塀を立てるような野暮なことはしません。あくまで一つの敷地に2棟の家があるかのような、緩やかな外構計画です。
knkz1.jpgknkz2.jpg

ここに建っていた家は、部屋の南側に縁側を回した日本家屋で、増築された応接間や客間とも廊下で繋がれ、2棟の間には池が造られていました。さらに敷地の奥、家の南側には日本庭園があって、小さな森のようになっていました。この想い出深い庭は、2つの家で共有するようにそのまま残し、どちらの家の中からも、以前の家と同じ景色を望むことができます。

兄弟でも生活スタイルや細かな要望は異なるため、両者の間取りは同じではありませんし、細部も違う所はあります。しかし、2棟の家は違和感なく並んでいます。

knkz3.jpg

調和の取れた姿になっているのは、外壁をはじめとした外部の仕上げ、屋根の勾配や下屋庇の構成、戸袋のある雨戸サッシ、布団干し専用のミニバルコニー等、統一された要素で造り上げられているからです。

親子や兄弟で隣り合って住宅を建てる場合でも、各々の好みで全く違う家にしてしまうことが珍しくないご時世ですが、向こう三軒両隣の家ぐらいは気にして、周りとの調和を考えてほしいと思います。もっとも、周囲と調和させようもないぐらい、日本の住宅地は酷い有り様になっている訳ですが、それでも家の外観を私物化するのではなく、公的な感覚を大切にして考えたいものです。施主本人よりも、周りの人の目に触れる時間の方が長いとさえ言えるのですから。

さて、室内のことにも少し触れましょう。長い人生経験のある建て主には、「こうしたい」という想いが強くありましたので、プランに関してはご要望に素直に従いました(笑)
私からの提案は、2階への昇り降りが楽になるように、階段に使うスペースを普段より広くして、回り段を減らしたり無くしたりした上で、蹴上寸法(高さ)を180に抑えたことです。今は何の心配も無いほどお元気ですが、将来もできるだけ2階を有効に使ってもらいたいと思っています。

knkz5.jpg

寝室のドア、収納の引き違い戸、階段に面した廊下の腰壁に輸入壁紙を使いました。英国のHARLEQUIN(ハーレクイン)のFOLIAコレクションから選んだもので、大きな花弁が咲き乱れる躍動的なデザインながら、落ち着いたモノトーン色で抑えを効かせ、この家によく合っています。

knkz4.jpg

キッチン背面には家具造りの食器棚、廊下には扉付の本棚があります。家具屋さんが無垢の木で造る扉や引出しは、工場で丹念に仕上げを施しているので、とても綺麗です。また、旧家で使われていた材料も幾つか再利用しました。階段の親柱に転用したのは、かつて床柱だった辛夷(こぶし)皮付丸太です。葉の形をした襖の手掛けも味わいがあります。

LDKを見てみると、どちらもキッチンは壁向き独立型。子供と暮らす訳でもないので、リビングに吹抜けもありません。開放感よりは落ち着ける空間を指向していますが、それでいて、大きな窓を通して庭との繋がりは強く感じられます。また、3帖の勝手口収納や4帖の納戸、複数の押入など、収納は多過ぎるぐらいですが、「物持ち」の方にはこれぐらい必要かもしれませんね。
子育てを終えたご夫婦の「終の棲家」としても、きっと参考になると思います。

岸 未希亜

Category
お知らせ
建築と住まいの話
よもやま話
ロコハウス
書籍・メディア掲載
Archeives