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2016.07.07 / 建築と住まいの話

10年ぶりの福井

毎年この時期に、フクビエアサイクルチェーン全国工務店大会が開かれます。例年は東京で行われるのですが、今年はフクビの本社工場がある福井県福井市で開催され、社長と一緒に参加して来ました。
初日はホテルの会場で表彰式、報告会、講演会、そして懇親会があり、2日目はフクビ本社工場とエアサイクル実験棟を見学しました。

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2棟の実験棟は32年前に建てられたものですが、次世代型エアサイクル工法と在来木造の高断熱高気密工法を比較検証するため、建物をリニューアルしています。建築家の中西ヒロツグ氏が設計したエアサイクル棟は、ガルバリウム鋼板の外壁が目を惹き、見た目で差を付けている印象もありますが(笑)、パッシブデザインを取り入れた次世代向けの設計提案になっていて、実験の検証結果が楽しみです。

午後は、エアサイクルグループの工務店と別れて、福井県で素晴らしい家をつくり続けている「住まい工房」を訪問しました。住まい工房と当社の間には、浅からぬ縁があります。

当社がエアサイクル工法(当時PAC工法)を取り入れるようになった30年余り前、住まい工房の前身である福井ハウジングもPACグループに所属していました。当時の当社社長(現社長の父)と住まい工房の現会長は、グループ内で親交を深めながら、切磋琢磨していたと聞いています。
そのグループを通じて建築家の吉田桂二氏(私の師匠なので以下、桂二さん)と交流するようになった両者は、少し違ったアプローチで桂二さんとの関係を深めていきます。

当社は、桂二さんをセミナーの講師に招きながら、建築家との家づくりを望まれるお客様を紹介し、一つの工務店としては最多になる8棟の住宅を施工しました。基本計画の過程、図面、現場での指導を通じて「吉田桂二の家づくり」を学び、今日の礎にしています。

一方、福井ハウジング(当時)は、桂二さんが考案した「無限定空間の家」の施工者に名乗りを挙げ、この実験住宅を完成させました。
そして竣工までの期間、月に1回訪れる桂二さんにお願いして、全社員を集めた勉強会を開催したのです。それは「吉田桂二の木造学校」が始まる約15年も前のこと。同社はその後も桂二さんを招いての勉強会を続けるなど、設計力はもちろん社員教育にも磨きをかけ、今日の「住まい工房」をつくり上げました。

私自身は、連合設計社在籍時の2006年、住まい工房からの依頼で南越前町の今庄(いまじょう)に1棟の住宅を設計させていただきましたが、同社を訪問するのは、それ以来10年ぶりのことです。今回は、実際に建て主が暮らしている家を2軒、街中のモデルハウスを1軒見せていただきました。最近、吉田桂二賞やチルチンびと住宅建築賞(工務店設計者部門)を受賞するなど、以前にも増して設計施工力が磨かれていることは知っていましたが、それを実感することになります・・・

一つは、北側が公園に接する恵まれた環境を活かした、伸びやかな住宅です。

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物置や自転車置場、薪ストーブの薪置場も一緒に計画されていて、統一感が取れています。室内は柱を隠したモダンな空間で、10年前とは違う、新しい住まい工房を見ることができました。

もう一つは、期間限定のモデルハウスとして計画された建売住宅です。

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準防火地域ということもあり、ケラバを無くした防火仕様の箱型の外観が印象的な建物で、隣には同社が施工したお客様の家が建っており、統一感のある町並みを形成していました。

最後の家は床面積100坪の大邸宅で、どっしりとした風格のある和風住宅です。

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室内の撮影は遠慮しましたが、そこには見事な空間が連続していました。吉田桂二の外弟子としては右に出る者がいない、山祐三さん(住まい工房)の真骨頂を見た思いです。この規模の住宅をまとめ上げる力と、この大きな家を任される会社の信頼性に舌を巻き、素直に感心する他ありませんでした。

環境や条件が異なるとはいえ、地域工務店としての取り組み、その施工例を目の当たりにして、大きな刺激を受けて帰って来ました。まだまだやることがたくさんある、そんな感じです。

岸 未希亜

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