春になると草木が芽吹き、落葉樹が見違える姿に変わります。そして新緑の時期には庭が緑に包まれ、住まいに潤いを与えてくれます。この季節は、住宅の写真撮影にも絶好のタイミングなのです。
先日、約1年前にお引き渡しをした世田谷区の住宅を訪ね、建物の撮影をさせていただきました。
雑誌取材の場合は、大抵カメラマンが派遣されて来るのですが、取材でなく撮影だけの場合は、写真家の山田新治郎さんにお願いしています。山田さんは、雑誌「住む」や「チルチンびと」でも撮影している本格派の建築写真家で、私が神奈川エコハウスに入社する前からなので、もう10年以上の付き合いになります。
当社で最初に撮ってもらったのが、コンセプトハウスでした。
プロの写真家なので当然ですが、まずは技術面で素人との差が歴然です。
建築写真では手前から奥までピントを合わせる(被写界深度を深くする)のが基本で、そうするとシャッタースピードが遅くなるため、基本的には三脚を使います。また、被写体を測光しているので、画面が暗すぎることも明るすぎることもありません。シフトレンズを使ったりして、建物の垂直がきれいに出ているのも美しさの秘訣です。
そして風景写真ほどではないにしても、構図のセンスは問われます。設計者と写真家で見せたい場面が合わず、後でガッカリすることもあるのですが、山田さんは構図を任せられる写真家です。
4月にオープンした山内龍雄芸術館も撮影してもらいました。
凛とした空気感が伝わるような写真です。設計と施工も良かったとはいえ(笑)、写真によって建物の魅力が引き出されていると感じます。
世田谷区の住宅は遊歩道のある川に近く、反対側には小さな森も残っていて、都心でありながら自然環境に恵まれた立地です。敷地から河川と遊歩道に向かって視線の抜ける場所があり、その眺めを最大限に享受するため、1,2階ともに南西のコーナーに窓を設けました。
準防火地域なので、この窓を透明ガラスにするためにはシャッターサッシを使わなければなりませんが、木と塗り壁の優しい表情の外観に、無骨で閉鎖的なシャッターは似合いません。そこでシャッターボックスを隠す板壁を造り、窓の周囲を柔らかい表情にしました。
室内は無垢の木や漆喰、木組み、建具、家具などで、常に神奈川エコハウスらしさが表現されていますが、外観は「ふつうだね」と言われることもあります(苦笑) でも今回は、前述の板壁と木製バルコニーで表情が引き締まり、とても感じの良い外観になりました。
この住宅は「バルコニーを挟みこむ家」として、もう一軒の「床座スタイルの二世帯住宅」と併せて、近日中にホームページの「事例紹介」に加わります。
お楽しみに。
岸 未希亜