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2016.04.05 / よもやま話

吉田桂二先生の思い出(1)

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 吉田桂二先生が昨年12月に亡くなられてから4ヶ月がたった。その間、建築雑誌をはじめとして様々な媒体にて先生の追悼記事を読んだ。そのたびごとに蘇る記憶の数々がある。
 1980年代の中頃から1990年代の終わりにかけて、当社主催の「住まいと健康のゼミナール」のメイン講師をお願いした。数にして30回余り。多忙な日程を縫ってのことであった。加えて、講演会の後の懇談会にもほぼ毎回参加いただけた。4~5名といった少人数での会。実に多方面にわたるお話を伺うことができた。薫陶は、今も当社のなかで生きている。
 写真はその時のもの(1990年頃)。写真左は、当時の当社社長であった父、下平信治。吉田先生とは同じ年齢。父の方が6日間だけ早く生まれている。出身地も近い。先生が岐阜、父が伊那谷。更には戦後二人共、東京に上京している。先生は東京美術学校に、父は、旧制東京府立二中が都立立川高校になり編入。二人は良く気が合っていたようで、先生は父のことを「長野の周恩来」と評していた。風貌が似ていると思われていたのだろうか・・・

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 講演会は湘南を中心に時には横浜で開催された。先生の著書「間違えだらけの住まいづくり」「見直しの住まいづくり」をベースにしながら、先生が設計された住宅をスライド上映するスタイル。ソフトな語り口に加え、ユーモアにあふれた肩のこらないものであった。次第に聴講された方々の中から自宅の設計を希望される方々も現われてきた。全ての話が成就するという類の事ではないが、最終的に8棟の住宅が実現した。
 実に印象深いことがある。クライアントとの初期の打ち合わせの局面で、打ち合わせ終了後、それこそつぶやかれるように「惚れてもらえたようだから・・・うまくいくでしょう・・・」と話されたことが度々あった。大先生にしての「惚れてもらえたようだから」は、当時若かった私にとって衝撃的だった。以来、まずは「惚れてもらえるかどうか」が社訓となっている。

下平 勇
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