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2016.02.28 / 建築と住まいの話

暮らしの見学会

今週末に開催される「住まいの教室 第6回」では、実際に暮らしている住まいを拝見します。

最初に見学するのは、間もなく築2年になるお住まいです。計画を始めたのは2012年の秋でしたが、じっくり打合せを重ねてプランが決まり、その後は開発申請と農地転用に数ヶ月、土地の造成工事に約2ヶ月を擁して2013年の秋に建築工事が始まったので、建物完成までに約1年半の歳月が流れました。

「カフェスタイルの家」と名付けたこの家には、4つの特徴があります。
一つ目は、インテリアを愉しむための空間デザインです。

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奥様は、古びた箪笥や建具、古材を使った棚などのほか、エスニックのインテリアがお好みです。インテリアが映えるように、すっきりとした白壁の住宅を求めていた奥様は、建築家・田中敏溥さんの設計にも惹かれたということで、そのイメージを基に、柱や梁の見せ方を控えめにしてカフェのような家を目指しました。

二つ目は、大勢の人を呼んでも狭く感じない大きなリビング・ダイニングです。お友達を招いてのホームパーティーや、クリスマスリースのような作品づくりの集まりを奥様が主催するため、LDKとして26帖もある豊かな空間を用意しました。

三つ目は、北側に広がる景色を室内から眺められることです。

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一般的に北側は、小さな窓が並ぶ家が多いと思いますが、敷地の北側に畑や丘が広がっているこの立地を生かさない手はありません。そこで、ダイニングとスタディコーナーのある1階、吹抜とホビースペースのある2階とも、北面に大きな窓を設けて景色を取り込みました。

四つ目が、家具やタイルなどのインテリアです。

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キッチンと洗面台には、色も形も存在感のある「コラベル」というタイルを使いました。造り付けの家具は、あえて節のある板を使ったり表面に凹凸を付けたりして、古家具のような雰囲気にしています。建具も凝っていて、玄関や洗面室の出入口には、アンティークガラスを使った古建具のような引戸を作りました。

次に見学するのは、昨年の4月に完成した築1年未満のお住まいです。敷地が広い場合、親世帯が住む既存家屋を残しながら、敷地の一部を切り取る形で子世帯が家を建てるケースがありますが、このお宅もそれに類似したケースです。家を建てられる場所が限られていたため、総2階建てのシンプルな住宅になりましたが、逆に多くの方に参考になる住まいだと思います。

「ひとつ屋根の下を感じる家」と題したこの家の魅力は、何と言っても吹抜けを介した1階と2階の一体感に尽きます。総2階のコンパクトな住宅だからこそ、吹抜けによる立体的な空間の広がりは効果的です。吹抜けがあると木組みを見せやすく、「木組みの家」を感じられるのも利点ですし、1階に床暖房を入れているので家全体が暖まり、冬でも快適に過ごせます。

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さらに、吹抜けに面して本棚のあるライブラリーを設けています。この共用スペースがあることで、実際に2階と1階に分かれていても気配を感じられ、家族が繋がります。
さらに子供部屋の造りもひと工夫しました。最初はワンルームにしておき、将来は分けられるようにするのは一般的ですが、ここは単純に2室に分けるのではありません。寝るための部屋(ベッド+収納)2室と勉強スペースに3分割し、この勉強スペースを吹抜けに面したライブラリーと繋ぎます。子育て家族には、知っておいてほしい形です。

ダイニングに造り付けのベンチソファーを設けているのも特徴です。その並びにカウンターデスクを造り、家族共用のPCコーナーにしました。

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ダイニングテーブルはカンディハウスの「HAKAMAダイニング」で、非常に特徴的な形をしています(上写真は別のテーブルです)。ポール・ヘニングセンがデザインしたPH2/1(louis poulsen)という照明器具とともに、そのデザインに魅せられます。

外観については、「シャッターをいかに隠すか」がこの家のテーマでした。準防火地域における開口部の制限が厳しくなり、窓にシャッターを付けざるを得ない場面があります。個人的に思うのは、内外の境界である開口部を遮断してしまうシャッターは、その無骨な姿も含めて住宅にそぐわない、ということです。シャッターの存在を消すための工夫を、開口部のデザインに発展させている点を見てください。

実際に生活している家を見られることは、完成見学会以上に「暮らし」のイメージが沸くと思います。併せてタイプの違う2つの家を見比べる機会でもありますので、きっと貴重な体験になると思います。

岸 未希亜

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